![]() | 蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦 (オーバーラップ文庫) 田代 裕彦 naji オーバーラップ 2013-07-24 by G-Tools |
煌国の下士官竜士である竜洞マスミは赴任先の端琉島で親友の竜部シンヤとその妹、アユネと再会を果たす。敵国であるグロース帝国が端琉島へ奇襲攻撃を行い、部隊は甚大な被害を被ってしまう。かろうじて難を逃れたマスミとシンヤは、住人を脱出させるため、絶望的な戦力差のなか、敵国の戦闘機部隊との戦いに赴く。
その名を知らぬ者なし
天津国の歴史に名を残す二人の傑物の軌跡を描く戦記ファンタジー
傑作じゃないですか(断言)竜と戦闘機が空戦を繰り広げる世界観イイネ! ロマン溢れて脳汁ドバドバ!
天津国最南端の端琉島へ赴任した主人公・マスミが、グロース帝国の侵略によって占領された島から住民を助け出すため、戦友たちを犠牲にしながらも軍人としての矜持を貫き、戦い抜く様に胸が熱くなりました。
戦争の中で次々に大切なものを失いながらも、与えられた任務を最後まで全うする男の姿に惚れました。
竜に乗って空を駆る竜騎兵の師範として任地に就いた竜士のマスミですが、そこでは軍隊での階級よりも家格や家同士の対立といった悪しき風習である封建制が蔓延っていて、内憂に悩まされるのだけれど、祖国の敵であるグロース帝国が奇襲攻撃を仕掛けてきて、突如発生した実戦の中で自分の力を周囲に認めさせ、反目し合っていた部下たちとも信頼を築いて、落ちこぼれという風評を覆しエースとなっていく光景に心が晴れました。
占領された島から非戦闘員を脱出させる時間を稼ぐため、敵基地からやってくる戦闘機の迎撃にあたるも、自分の指揮下で部下たちを次々と失い、果たして自分の判断が正しかったのか、無力感に苦しむ姿が辛かった。
犠牲を強いられながらも己の誇りを貫くため、最後に敵基地への決死の救出作戦を敢行するのだけれど、任務の成功と引き換えにかけがえのない大切な人を失って、それでも戦場の常と泣くに泣けない彼に泣けました。
部下を生き残らせようと、必死に敵指揮官の思考を探ろうとするのだけれど、相手が考えられないほど無能で、過大評価をするあまり無駄に振り回されてきたことに気づいた脱力感、疲労感ときたらたまりませんね。
今回は歴史に名を残す傑人・マスミの壮絶で殺伐とした初陣劇が描かれたわけですが、マスミの影に隠れがちになっていたもう一人の偉人であるシンヤの活躍は、次回に期待しましょうか。二人の友情がどうなるのか?