とある飛空士への誓約 3 (ガガガ文庫) 犬村 小六 小学館 2013-07-18 by G-Tools |
四回生のバルタザール、かぐらのふたりがエアハント士官学校を卒業し、「エリアドールの七人」はついに離ればなれに。三回生となった清顕は、模擬空戦を経てイリアとの距離を少しずつ縮めていたが、ミオとは会話をすれば喧嘩という状態。久々に索敵訓練でペアになったものの、敵機と遭遇し、樹海に降下してしまう。
この罪を抱いて、生きる
七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語
ラノベでの幼馴染ヒロインは噛ませ犬、と言わんばかりのミオの転落ぶりに、ぶっちゃけ泣きました。
家族を人質にスパイ活動を強要され、葛藤で心がボロボロになりながらも清顕を密かに慕い続けるミオの想いに胸が締め付けられました。バルタザールとかぐらが卒業し、激化する戦争によって、次第に道のりが分かれてバラバラになっていく「エリアドールの七人」の少年少女たちの友情が物悲しさを加速させます。
家族愛と友情との狭間でミオが一人で苦悩を抱えているというのに、清顕ときたらエース候補として期待され、イリアとも休日にデートに行くところまで打ち解けて、有頂天になっている姿が憎たらしくて仕方がない!
やっと栄光の道を歩み始めた清顕に迷惑をかけまいと、本当は誰かに助けて欲しい気持ちを押し殺して大好きな清顕のために、関わらないよう身を引こうと考えてしまうミオの自己犠牲精神がいじらしくて切なかった。
疎遠になってしまったミオとの関係を取り戻すため、清顕も方法を模索するけれども失敗続きで、無人島に不時着した一夜の出来事は最後の機会だったのだけれど、それもなかったことにされて、非常にもどかしい!
そうこうしている間にも、危機は忍び寄っていて、突然に訪れる日常のあっけない幕切れには、世界の不条理と理不尽が満ち溢れていて、ゼノンやカーナシオンといった邪悪と悪意の権化に憤りを抑えきれなかった。
友を裏切る罪悪感に押し潰されて、徐々に精神を病んでいくミオの心理描写を読んでて心が折れました。
出世コースに乗って自慢気なバルタザールがツンデレ可愛いのだけが癒しです。機長かわいいよ機長。
そういえば、表紙はメンバー七人が一人づつでてくるんだと思ってたけど、今回はどうして二人なんだ? まあそんなことはいいが、清顕そこをどけ! お前が邪魔で見えるはずのものが見えないだろ!
そうなると「裏切り者」の意味も変わってくるのかも知れません。
作中の視点ではウラノスは敵ですが、ウラノスにも人々が住まい生活しています。
「プレアデスの奇跡」がウラノスの崩壊であれば、その渦中で多くの人々が犠牲になるはずです。
第二次イスラの際に、ミオとライナは二重スパイとしてウラノスを裏切るのではないでしょうか?
その結果、ウラノスは崩壊し多島海勢力は分裂して内戦に突入。清顕とイリアは戦い、ミオとライナは「ウラノスの裏切り者」として名を残します。
文中に「仲間たちを地獄に突き落とした」とも書かれていますし。
恋歌で出てきた「空の一族」とすると滅亡はしないまでも、勢力が失われることはあるかも知れませんね。
イリアと清顕が戦うことが濃厚になってきて、さてヒロインのどちらが結ばれるんだろうかと期待と不安がよぎります。