ダフロン

2013年07月05日

丕緒の鳥 十二国記/小野不由美

4101240582丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫 お 37-58 十二国記)
小野 不由美 山田 章博
新潮社 2013-06-26

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「絶望」から「希望」を信じた男がいた。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか表題作「丕緒の鳥」ほか短編4編を収録。

 名も無き偉人の伝記

 国家の中で己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編

1話目『丕緒の鳥』
 「大射」と呼ばれる儀礼を監督する丕緒が、王に民の苦しみを伝えようと苦心するお話。
 華やかさや娯楽性が求められるようになった「大射」の儀に、時代が進むにつれ失われていた本来の意を見出した丕緒が、下級役人ながらも民と国の惨状を憂いて新たな王にその思いを託す姿が心を揺さぶりました。
 国典とはいえ、皿一枚に様々な工夫を凝らす人々の技術が人間国宝級。これ産業にしたら国支えれるよ。

2話目『落照の獄』
 重罪人に死刑を与えるか、無期懲役とするかで民意と司法の狭間で懊悩する判吏の瑛庚のお話。
 死刑制度と更生についての倫理上の深い論旨が展開されて、現代の日本にも通じて読んでいてあれやこれやを考えさせられました。人を裁くことは人の手に余る。司法の限界に立たされた男の無力感が痛ましかった。
 刑罰に犯罪を抑止する威嚇力がないのであれば、犯罪を起こさせない治安維持をまずは作るべきだった。

3話目『青条の蘭』
 山毛欅の木を枯らす奇病に立ち向かい、里を救おうとする地方役人の標仲と友人二人のお話。
 深刻な危機が迫っているのに村人や周囲が危険を理解できないのが歯痒くて、たった三人で野山を駆け巡り、根気のいる繁殖作業を繰り広げ、やっとの思いで根付いた苗を王へと献上して危機を打開しようと奔走する姿が焦燥感にかられる。標仲から苗を受け取った名も無き人々が繋いでいく願いのリレーに胸が熱くなった。

4話目『風信』
 自然現象を観測し、人々が生きる道標となる暦を作る気象官の嘉慶たちのお話。
 国が傾いて皆が大変な時だというのに、現実離れした気象観測ばかりにのめり込む嘉慶たちの姿に憤慨する蓮花の気持ちはわかる。けれど、他に何もできない彼らの苦悩もわかって欲しかった。自分たちの仕事が理解されずに批判を浴びても、それが人々の役に立つと信じて職務に準じる嘉慶たちは十分に立派だと思った。

 地位は低くとも国を憂う男たちの姿に感銘を受けました。国のあり方を魅せる十二国記のシリーズ通じたテーマが込められてて、上から国を見ていたこれまでとは逆の視点で下から見た国を描いた珠玉の1冊でした。

posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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