![]() | 灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ (オーバーラップ文庫) 十文字 青 白井 鋭利 オーバーラップ 2013-06-22 by G-Tools |
ハルヒロは気がつくと暗闇の中にいた。何故こんなところにいるのか、ここがどこなのか、わからないまま。 周囲には同じように名前しか覚えていない男女、そして地下から出た先に待ち受けていた世界。生きるため、ハルヒロは同じ境遇の仲間たちと義勇兵見習いとして「グリムガル」への一歩を踏み出していく。
明日へと託された思い
記憶喪失のまま異世界に飛ばされた少年少女たちが生き残るための冒険を始めるファンタジー
Wizardryだ!まごうことなきWizardryの世界だ。こういう作品を読むと本当に異世界に行きたくなります。
記憶を失い異世界グリムガルへとやってきた主人公ハルヒロが、同じ境遇の少年少女とパーティを組み、義勇兵見習いとしてモンスター退治を続ける日々の中で築く信頼と絆、避けられない出会いと別れに涙しました。
ゲームのような世界観でありながら、死んだらそこで終わりというシビアなリアルが恐ろしい。
やや消極的で頼りない少年のハルヒロですが、運良く出会って共に行動するようになるパーティの仲間たちがイイ奴らばかりで、そんな彼らのために気を配り、他人の気持ちを察する思いやり溢れる姿がよかったです。
それまでの記憶も経験も失ったレベル1状態で異世界に放り出されたものだから、RPGのセオリーとかまったく無視で、ヒーラーが前衛とか危なっかしいことばかりして、案の定、大惨事に繋がって目も当てられない。
パーティの要とも言える仲間を失い、深い悲しみに暮れる面々に対し、仲間を託されたハルヒロは代わりのリーダーにならなくてはならず、必死にもがきながら前に進んでいこうとする決意に心が揺さぶられた。
新しくスカウトした神官のメリイとそれまでの仲間との関係や連携を試行錯誤で取り持ちつつ、装備を整え、スキルを磨き、苦労に苦労を重ね、やっとの思いで仲間の仇討ちを果たす光景に胸がいっぱいになりました。
何もかもが足りていない落ちこぼれプレイヤーが失敗と挫折を繰り返して、少しずつ経験値を稼いで成長していくストーリーに親近感と共感を得ます。元からステータスの高いルーキーやベテランにしてみれば取るに足らない僅かな経験値でも、努力を必要とする彼らには大切な仲間との思い出、ドラマが詰まっていました。
見習いからようやく一人前の義勇兵になった彼らの今後の行く末と世界観の秘密に興味が高まる。