からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫) 仲町 六絵 アスキー・メディアワークス 2013-05-25 by G-Tools |
京都の一角に佇む「からくさ図書館」は、優しげな図書館長の青年と可憐な少女とが二人きりで切り盛りする、小さな私立図書館。紅茶か珈琲を味わいながら読書を楽しめる、アットホームなこの図書館には、その雰囲気に惹かれて奇妙な悩みと出会ったお客様が訪れる。
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現世に彷徨う「道なし」を導く黄泉の冥官と図書館に訪れる様々な来客たちを巡るゴーストファンタジー。
小じんまりとして温もりあふれる佇まいの「からくさ図書館」の雰囲気に本読みとしては憧れますね。
閻魔庁の役人である小野篁と時子が、自分たちの営む私設図書館「からくさ図書館」を訪れるお客に憑く彷徨える幽霊「道なし」の未練を無くし、あの世へ導く過程で描かれる生者と死者の交流が心温まりました。
あらすじからするとミステリのようですが、謎解き成分は0ですので思い違えないように。私は間違えた。
かつて平安貴族として生きて、死んでからは閻魔庁の役人として現世に舞い戻った小野篁と時子様の暮らしぶりが不思議に満ちていて、彷徨える霊「道なし」を取り憑かせたお客が図書館にやってきては、一般人に正体を明かして相手を驚かせる小野篁の悪ふざけが可笑しいです。ふざけているようで冥官の仕事はキッチリとこなすのだから、部下の時子様はやりづらいでしょうね。生前のイメージとのギャップに嘆く気持ちもわかります。
二人が導く「道なし」たちは、生前あるいは死後に善行を積んで天国行きが確定している善人で、何かを守ったり、誰かを救ったり、社会に貢献したり、生きて何かを成す、死して尚何かを成し遂げるそうした人々の生き様が胸に迫ります。「道なし」に取り憑かれた者も、死者の思いを汲んで心からの供養をしたり、故人に今後の人生に大切な何かを学んだり、死んだその先に繋がる未来の希望の種を感じさせてくれるのが素敵でした。
一つ一つの短編はとてもいいエピソードなのに、図書館や平安貴族やらの濃い要素を混ぜてしまったがために、ゴチャゴチャ感が悪目立ちして味を濁しているのが勿体無い。いっそ開き直って、もっとギャグに突き抜けていれば笑い所として捉えられたかもしれないですが、篁の変態性もネタとしてはイマイチ微妙だったかも。
設定で際立たせたい話の焦点がブレていて、もうちょい全体の調和に気を使って欲しかったです。