![]() | 温泉ドラゴン王国 1 ~ユの国よいとこ、一度はおいで~ (オーバーラップ文庫) 山川 進 児玉 酉 オーバーラップ 2013-05-23 by G-Tools |
山ばかりの貧乏国家「ユ国」の王子アリマは国の財政難について悩んでいた。そんな彼の元にある日、隣国の研究員が訪れる。研究者である少女ハナは、ユ国唯一の特色である「温泉」には特殊な効能を発揮する性質があることを明らかにする。アリマは温泉旅館での財政再建を目指すが
平和を愛する温泉の魔法
温泉旅館を作って王国を救おうとする王子と少女とドラゴンのドタバタ&ほのぼの温泉ファンタジー。
風呂に入るシーンのたびに混浴するヒロインの数が増えていってるじゃねーか……。この温泉、入りたい。
財政破綻寸前の小国ユ国に湧き出る唯一の資源「温泉」で観光客を呼ぼうと王子である主人公・アリマと、温泉研究員のハナが伝説に伝わる「温泉旅館」の復活を目指して繰り広げるドタバタがほのぼのと和みました。
温泉を目当てにやってくる珍客を相手に毎度騒動が巻き起こっていくやり取りも可笑しかったです。
貧しい祖国と国民と憂う生真面目な王子アリマと引っ込み思案だけれど温泉の研究には人一倍熱心なハナが出会って、お互いに想いを寄せていく姿が初々しくて、微笑ましかった。当たり前のようにあるものだから特別だとは思っていなかった「温泉」の価値に気づかせてくれたハナに感謝するアリマと、周囲にバカにされていた自分の研究を初めて認めてくれて信頼と居場所を与えてくれたアリマに尽くすハナの姿がいじらしかった。
古代人の建てた「温泉旅館」を蘇らせようとする二人の話を聞いて、温泉目当てにドラゴンやら、勇者やらがやってきて王国に騒動をもたらすのですが、散々、大騒ぎして最後にはオチがつく展開が笑いを誘います。
しかし、ユ国の温泉を狙って、帝国の軍隊までやってきてしまって、降参するのかそれとも戦うのか、王子として重要な判断を迫られるアリマの決断が、温泉への愛と平和への思いに満ちていて心が温かくなりました。
帝国軍を撃退する策は、あからさまの上に強引すぎる気もしましたが、まあライトファンタジーだし……。温泉の効能をなんでもアリにしちゃうと、それはそれでリアリティが崩れて読者を離れさせるんじゃないかと。
ユ国ののどかな国民性の登場人物たちやドラゴンに好感が持てました。キャラ名が全員温泉地の地名になってますが、ミササの元ネタの美笹の湯のマスコットキャラが「温泉に入った恐竜」だと思うとニヤリきます。