さまよう神姫の剣使徒 (富士見ファンタジア文庫) すえばし けん H2SO4 富士見書房 2013-05-18 by G-Tools |
あらゆるものが眠る大迷宮“大いなる門”で、探索士・ユウキは一人の少女を拾う。「ここがソリトゥス、我が街か!神姫の帰還をたたえよ!」街を守護する女神―神姫であると自称する拾われた少女・ティナは失った力を取り戻すため、ユウキに協力を求める。
世界を護る女神と英雄
落ちこぼれ探索士と、力を無くした女神が織りなすダンジョン攻略ファンタジー
シンプルにして王道のダンジョン攻略ファンタジーですね。そして安定のつるぺたロリ。勝ったな(何に)
都市の地下に広がる大迷宮に倒れていた少女ティナと、彼女を拾った落ちこぼれ探索士の主人公・ユウキが騒動を通じて、世界を護る女神とその下僕の剣使徒として絆が芽生えていく姿にドキワク胸が躍りました。
挿絵が口絵の使い回しで残念なんですが、原稿が締め切りに遅れたのか、絵師が間に合わなかったのか。
探索士としては最底辺でやる気もなく、都市の住人としてはあるべき女神への信仰心も薄く、お金に汚いユウキですが、他人に無関心で冷たいようでいて、人を見捨てられないお人好しぶりがツンデレで思わずニヤリ。
迷宮で生まれたばかりの女神ティナを拾って一緒に暮らすようになり、義侠心と正義感の強い彼女に振り回されて揉め事に首を突っ込んだり、振りかかる面倒事をのらりくらりとかわすやり取りがなんとも可笑しいです。
ユウキに想いを寄せる後輩の少女フランカを交えての三角関係も可愛らしいのですが、徐々に明かされていく複雑な家庭事情が同情を誘い、本来は明るくて健気な少女だけに内面で憎しみを燃やす姿がやるせなかった。
復讐に燃えていたフランカが真実を知って、すれ違っていた兄の気持ちに気づき、憎むべき父親の仇ですら救おうと我が身を投げ打つ行為は、人道的で気高く、慈愛に満ちていて素晴らしかったです。あなたが女神か。
神力を補給しないと奇跡を使えないティナがイマイチ使えない子なのですが、彼女の女神としての加護や特性を利用してライバルを出し抜く駆け引きは面白かった。ユウキのチートっぷりは、まあお約束ということで。
綺麗事だけでなく、都市の民には知らせず密かに反目し合う女神たちと利権で歪んだ女神の誓約団の不穏さが、モヤっとした苦味を残しますね。世界を護るために今後、二人が何を成していくのか、見届けたい。