![]() | よろず屋退魔士の返済計画 1 100億の契約書 (オーバーラップ文庫) SOW 蔓木 鋼音 オーバーラップ 2013-04-24 by G-Tools |
退魔の名門「神堂家」から破門され、かつて住んだ家に戻った追儺狗朗を待っていたのは幼馴染の九十九みぎりと100億円という莫大な借金だった。破門された身のため、退魔士として依頼を受けることができない狗朗だったが、みぎりの発案により「死者専門の何でも屋」を開業することに。
この世の未練よろず承ります
100億円の借金を背負った天才退魔士の少年と暴君少女が始める借金返済コメディ
いまラノベ業界で最もアンタッチャブルな作品と言われている今作でしたが、普通に面白かった。
ちゃらんぽらんな父親のせいで百億の借金を背負った主人公・狗朗が、借金の返済のために幼馴染・みぎりと幽霊専門の便利屋を始めるのですが、持ち込まれる依頼内容が一筋縄ではいかず、死んでるのにやたらとアグレッシブな幽霊やツンデレなヒロインたちに振り回される姿が可笑しかったです。
ヒロインとしてはあまりに外道すぎて作者も手直しに苦労したという幼馴染みぎりでしたが、借金の取り立て人として横暴に振る舞いつつも狗朗に執着している一面が見え隠れしていて可愛かった。
二人が受ける依頼は、悪い男に騙された女の幽霊のお悩み相談だの、ライバル漫画家の幽霊たちの喧嘩だの、ぶっちゃけしょうもない出来事ばかりなのですが、陰鬱にならない気楽さが笑いを誘います。
むしろ腐ったエゴと歪んだプライドから狗朗を追い出した本家神堂家の親族たちに怒りを覚えますね。死者である幽霊たちより、生きている者たちのほうがよっぽどドロドロとして醜くて胸クソ悪かった。
本人には何の罪もないのに哀れな境遇で虐げられて育ち、現世に執着が薄い狗朗を黄泉から呼び戻す生きる理由となる、みぎりとの絆や思い出が心温まった。淡白で地味な狗朗のキャラが少し理解できました。
ツッコミどころがあるといえば、みぎりも狗朗も高校行ってないのかね。やっぱラノベのキャラは学園生活を描かないと、今ひとつしっくりこないし、とくに幽霊や退魔ものは時代観も垢抜けないような。
とはいえ、天才退魔士である主人公がスーパー霊能力を発揮して力づくで解決するみたいな、ありふれてつまらない結末にならなかったところだけは本当によかった。あとハーレム展開だけは止めてください。