ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (3) (電撃文庫) 宇野朴人 さんば挿 アスキー・メディアワークス 2013-04-10 by G-Tools |
アルデラ神軍の大軍と向かい合う、疲労困憊の帝国軍。勝ち目の見えない状況で、イクタは起死回生の奇抜な作戦を決行する!そして、帝国軍を攻めるアルデラ神軍の中に、ひときわ目を引く一人の軍人がいた。彼こそ、『不眠の輝将』と讃えられる英才。強敵としてイクタの前に立ちはだかる男であった。
白き英雄と黒き英傑
のちに名将と呼ばれる怠け者な少年の激動の半生を描く壮大な架空戦記ファンタジー。
天才軍師VS天才軍師! これだよ! こういう知能の戦いが戦記ファンタジーの醍醐味だよ!
アルデラ神軍の侵攻により、追い詰められた帝国軍を救うべく、イクタたち騎士団と僅かな手勢だけで大軍を食い止める作戦に奮闘し、そこで起こる敵将とイクタの仕手戦の駆け引きに唸らされました。
前巻も十分に殺伐としていましたが、今回はさらに血生臭い最前線での戦ぶりに背筋が凍った。
アルデラ神軍との戦いにシナーク族の力を借りるため、和解を申し出たイクタの取った手段は常軌を疑うもので、効率のために自分すらも犠牲にする彼の計算づくの誠実さが悲しくて腹立たしい。
敵の進軍を炎上網によって阻み、時間稼ぎを行う合間にも日毎に部下たちに犠牲が増え続けて、ただ防御に徹して耐えるしかない戦いに置かれた兵士たちの悲哀と絶叫に身が引き裂かれる思いでした。
敵側について帝国軍を攻める『不眠の輝将』ジャンも、イクタに匹敵するほどの策士で、最新兵器を惜しまず投入してくる彼とイクタの互いに互いの手を読み合う知略戦には引きこまれましたね。
当初の不利を覆せずついにジリ貧になったイクタの作戦は、相打ち狙いのチキンレースとでもいうべきものでゾッとする。ジャンの敗因は頭がいい奴が頭のおかしい奴にまともな戦いを挑んだことでしょうかね。
イクタの切り札としてトルウェイやヤトリにも格好良い見せ場があり、マシューやハロも過酷な戦場で成長していく姿に心を揺さぶられた。こんな部下たちに恵まれたサザルーフ大尉は幸運なのか不運なのか。
命からがら凱旋できたものの、失った犠牲はあまりにも多く、代わりに得たものは少ない不毛な結末でしたが、シャミーユ殿下が労ってくれると信じよう。次回は殿下の出番がもっとあるといいなぁ。