天使たちの課外活動3 - テオの日替り料理店 (C・NOVELSファンタジア) 茅田 砂胡 中央公論新社 2013-03-26 by G-Tools |
リィとシェラに社会体験学習の順番が回ってきた。中学生と高校生に義務づけられた授業の一環で、実際の職場に働きに行って経済活動を勉強するものだ。人前に出る仕事は避ける方向で(目指せ一般市民なので)悩んでいると、ひょんなことから潰れかけた料理店の立て直しという話が舞い込んだ。
こころを満たす魔法の料理
課外活動として人助けを行う、見た目だけは天使な少年たちのスラップスティックミステリー。
最高傑作級の飯テロだな。何故ここにフルコース料理のディナーがないのか!と嘆きたくなりました。
社会体験学習の一環で、潰れかけた料理店『テオドール・ダナー』の臨時従業員となったリィとシェラが、持ち前の破天荒な行動力を駆使して、お店に客の笑顔を取り戻していく光景がこころ和みました。
非常識な生徒を受け持って気苦労の絶えないエリオ先生がお気の毒すぎて慰めてあげたくなった。
無愛想な頑固親父の店長テオドールを上手く御してお店を繁盛させる過程が面白可笑しかった。
学園祭のときにも披露したメイド服を着て客寄せをしたり、ルウやシェラがお菓子を作ってティータイムを設けたり、訪れるお客を驚かせながらも日毎にお客を増やしていって、中学生とは思えない経営視点や営業力で、単なるウェイトレス以上の働きぶりを披露してくれるのだから愉快でしかたがない。
そんな二人が不思議がるくらい、『テオドール・ダナー』も普通とは違った奇妙な料理店で、倉庫にはテオドールの妻アンリの遺した高級家具や美術品が山のようにあるし、かつてのリピーターには政府の要人もいるしで、でも料理以外には無関心なテオドールはそのおかしさをまったく気にもとめていなくて、世間知らずにも程がある!とツッコミたくなりましたわ。職人ってのはこういう変人のことを言うのだろうなぁ。
『料理の神様』ことテオドールの料理にかける情熱と亡き妻アンリの深い愛情が素晴らしかった。
アンリの死で失われかけていた家族の絆が、再び料理で結ばれたところが感動を呼びました。
ジェイソンや二世おじさんたち脇役の人々も、意外な人間味が感じられて温かかったなぁ。
料理の描写よりも、料理を食べた人物のリアクションの描き方が巧み。ああ、読んでたらお腹が空いた。