放課後の魔法戦争(アフタースクール・ブラックアーツ) (電撃文庫) 鈴木鈴 さらちよみ アスキー・メディアワークス 2013-03-09 by G-Tools |
世界の裏側で暗躍する“魔術師”。日夜抗争を繰り広げる彼らは、ある学園を舞台に“魔法戦争”を開始した。“魔術師”の父を持ちながら魔術の才に恵まれず、また“魔術師”の世界を嫌い、日常に身を置いていた少年・三九郎は、幼馴染みの少女・ねねこと共にその『戦争』に巻き込まれてしまう。
伏してもなお咲く桜
魔術の使えない主人公が魔術師たちと命がけのバトルロイヤルを繰り広げる学園魔術バトルもの
少年少女が欲望のままに殺し合う、これぞ鈴木鈴だなというサツバツとしたアトモスフィア全開でした。
魔術の使えないおちこぼれの主人公・三九郎が、亡き父親の遺した魔術工房の遺産相続の争いに巻き込まれ、幼馴染・ねねこを守りながら魔術師を相手に命がけで戦い抜いていく展開が燃えました。
キャラ設定といい、主人公たちの能力といい、直球の王道異能バトルもののお約束を心得てますね。
魔術が使えず、魔術師を嫌う三九郎にやる気を起こさせるためだけに、殺し合いに巻き込まれた一般人のねねこですが、ただの食いしん坊キャラかと思えば、天然ぶりを発揮してライバルの魔術師とも仲良くなってしまったり、バカに見えて三九郎を信頼しているが故の脳天気だったりと、ヘタレで逃げ腰の三九郎に比べて肝が据わっていて、こやつなかなか侮れぬ……。本妻の余裕の輝きが眩しいよ。
魔術師たちは、それぞれ自分の所属する工房の利益や自分の欲望のために殺し合いを楽しんでたりする性格破綻者なんだけれども、"魔法戦争"の参加者の中には切実な願いを抱えている者たちもいて、それぞれが一時的、永続的に駆け引きを繰り広げ同盟を組みながら戦い抜いていく様に魅せられた。
三九郎の能力は升気味だけれど……まあ、よくある話ですようん。あえて誉めも貶しもしない評価。
お互いに一進一退のせっかくの好勝負を、汚い大人たちに横槍を入れられたのは残念でしたが、親友同士で殺し合い……と虚しい鬱エンドにならなくてホッとしたようなガックリきたような複雑な気持ち。
三九郎は工房がいらないなら、相続権を担保にもっと有利に立ち回れたと思うんだけどなぁ。
これ続編はどうなるのか。気の合う友人だけを集めて、工房を運営していくのも、面白そうだが。