ミミズクと夜の王 紅玉 いづき メディアワークス 2007-02 by G-Tools |
【ミミズクと名乗る少女の願いはひとつだけ、恐ろしくも美しい夜の魔王に「食べられる」こと。それは絶望の果てからはじまる、小さな少女の崩壊と再生の物語】
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
俺も一度は言われてみたい
奴隷の少女と森に棲む魔王の心の交流を描いた童話です。
人間に虐げられて育ち、心を病んでしまった少女ミミズクが、
「食べられる」ために魔物が棲む森へと向かい、そこで出会った孤独な魔王と奇妙な関係を築いていくといったお話。
『美女と野獣』のもっとハードっぽいカンジです。
人間としての尊厳を奪われ、心を壊してしまったミミズクが哀れに思う一方、その汚れなき純真性に惹きつけられます。
魔王フクロウと共に暮らした記憶をなくし、朽木に生えた若葉のように人の心が蘇っていく姿、そして再び記憶を取り戻し、悲しみにくれる様子が切なく、愛おしく胸を打ちます。
残念だったのは先の展開が丸わかりってことでしょうか。
「多分、こうなるだろうな」と推測しだすと、まさにその通りに物語が進んでストーリーが完全な予定調和になってしまう。
確かに御伽噺として謹厳実直で美しく、非の打ちようがないほどに綺麗で、しかしそれを冷めた眼で見る自分ガイル。
解説の有川浩や書評サイト各地で「泣きました」と絶賛されてるにも関わらず、私の心の琴線は何も揺れなかった・・・。
文学作品として完成度の高いものを作りながら、あえてそれを「崩す」、「汚す」のがラノベの本質だと思うのだけれど。
これがもしラノベではなく、児童文学や絵本で出ていたら素直に泣けたなとは感じるだけに、なんだか損をした気分です。
電撃大賞の大賞は、前回の『お留守バンシー』のように一般大衆ウケしやすい作品に取らせるようになってきたようです。
むしろ私は金賞銀賞以下の佳作や最終選考作にこそ隠れた名作が埋もれてるような気がしてなりませんけど。
あの『ラジオガール』なんて本来は最終選考落選ですから。
むしろラノベ専にとっての電撃新人賞は、賞こそ取れなかったが敗者復活戦で出版に漕ぎ着けた、この数ヶ月先に登場する新人勢だと思うわけですよ。いや、いるかしらんけど。
お留守バンシー 4 (4) 小河 正岳 by G-Tools |
ラジオガール・ウィズ・ジャミング
深山 森