銀星みつあみ航海記 LOG.1 (1) 鷹見 一幸 角川書店 2007-01 by G-Tools |
【元戦闘艇のパイロット&オペレーターのハヤトとハインツ。ひょんな経緯で手に入れた22億クレジットの大金で二人が始めたのは銀河をめぐる運送屋。しかし開業早々とんでもない依頼を引き受けてしまい・・・】
「奇跡の船と呼ばれた君の伝説はたった今終わった。今日からは幸福の船と呼ばれるための伝説が始まるんだ・・・・・・俺たちと一緒に伝説を作っていこうぜ!」
向かい風に帆を張れ!
銀河一、ヤバいブツを運ぶ運送屋さんの物語です。
小麦を生産する農業惑星バレリアで突如発生した細菌病。
惑星を救うには、長い年月で高性能爆薬に変質した化学薬品一万二千トンを銀河の彼方から運んでこなければならない。
誰もが尻込みするその依頼を受けたのは、たった三人の駆け出し運送屋。命がけの航海のときにこそ男を魅せるとき!
戦争で故郷を失ったハヤトとハインツが、金や名声のためでなく、バレリアを故郷とするクルーの少女リアンのために、危険な仕事を受ける決意を固める場面がもう青臭さすぎて、「ああ、なんてバカで、男の子なんだよお前ら!」と叫びたくなりました。
熱血漢なハヤトと冷静なハインツ、ピンチにフォローをきかせる純朴な少女リアン。キャラは薄いが、安定したいいトリオです。
一万二千トンの爆弾殺菌剤を運ぶ先々で起こる騒動が愉快。
密輸船と間違われて機動隊に突入されたり、修学旅行生の乗った大型客船の群に飛び込んでしまったり。
積荷の中身を知った人々の慌てふためく様子が可笑しいw
大騒ぎになりながら、それでも彼らの勇気に敬意を表して見送らざるを得ない人たちの葛藤は、かなりニヤニヤきます。
様々なピンチを乗り越え、バレリアに到着してナミオカが呟いた
「君達の仕事は今終わったよ」という言葉に胸がジンときました。
困難を成し遂げた者のみが味わう達成感がそこにあります。
それこそ綺麗事とご都合主義ですが、彼らをそう切り捨てられるのは、誰にも恥ることない仕事をしてる奴だけでしょう。
そして何よりこの話は、積荷は届けるが、クルーはいつも死んでしまうという、『奇蹟の輸送船』と呼ばれ続けた銀星号が、
『幸運の輸送船』と呼ばれるまでの再生の物語でもあります。
銀星号の人工知能クララが、ようやくクルーと一緒に仕事の成功を喜べて涙する姿が色っぽくて、男心にグッときますね。
ハインツが惚れかけてしまうのもわかります。
『でたまか』を継ぐ新シリーズということでしたが、実際は百年前のまだアウトニアも建国していない頃の宇宙が舞台でした。
ワインガー海賊団とか、聞いた名前は登場してきましたね。
まあ私はSFは銀英厨ならぬ、でたまか厨なので期待すぎの要素はありますが、はからずも銀河一の安全性を証明してしまった銀星号に、今後どんな依頼が飛び込んでくるのか、
非常に楽しみでなりません。
ここから数多い鷹見作品に入るのもオススメする作品です。
興味が沸いた方は、是非『でたまか』も読んでみてください。
『でたまか』こそはスペオペの王者ですともさ。
アウトニア王国人類戦記録5 でたまか 長嶺来光篇 鷹見 一幸 by G-Tools |