人類は衰退しました 8 (ガガガ文庫) 田中 ロミオ 小学館 2013-02-19 by G-Tools |
壊滅状態となってしまったクスノキの里の総人口は、激減しました。物資は豊富にあるものの、再建は進まずに、若者の里離れが加速してしまったのです。そんな折、「わたし」の祖父は、古い知人に誘われて旅行に出かけてしまいます。行き先は――月。
夢を追いかけるほど現実は離れていく
衰退した人類と"妖精さん"との間を取り持つ"調停官"のわたしのほのぼの活動記録。
妖精さんが働いたら、負けだと思う。妖精さんが忙しいと人類ヤバい。薬物の乱用ダメ。ゼッタイ。
壊滅して、住人が離れていくクスノキの里を復興させるため、"わたし"とYたちが拡張現実を活用したコンテンツで活気を呼ぼうとするも、妖精さんの介入で夢の世界まで拡張して、事態が"わたし"の手を離れてどんどん暴走していってしまう展開が、今回もメルヘンと夢と皮肉に溢れて面白可笑しかったです。
復興しなきゃいけないのに、たっぷりの支援物資で満たされた状況で、再建への意欲を失っていく里の住民たちの姿がどこかの東北地方と重なります。実際ハイチの状況とか、こんなもんらしいし……。
過去の技術を掘り出して里に活気を取り戻そうとするも、拡張現実の有用性が望んだ方向にはなかなか理解されず、"腐ったコンテンツ"しか流行らないこの人類はもう滅んでもいいんじゃないかなー。
山積みの問題で不眠症に陥った"わたし"のために、妖精さんが作った睡眠薬が里中に蔓延して、現実世界そっちのけで、夢の楽園生活に没頭してしまう人々の薬物依存症が狂気的でゾッとしますね。
強制排除で住人たちを撃ち殺し…もとい救済していく"わたし"や、いざという時にビビって頼りにならない妖精さんの姿には思わず吹き出しました。妖精さんに頼らずとも、"わたし"は頑張ればデキる子だった。
ヤンママ妊婦さんの出産問題が夢世界に関係してるとは思いもしませんでしたし、実は重かった事情が明かされていくのにはちょっと驚き、このシリーズはときどきこういう話を混ぜてくるから侮れない。
難産も無事に乗り切り、里の復興も軌道に乗り、万事すべて世はこともなしハッピーエンドかと思いきや、なにか忘れてると思ったら……あっ(察し) 次回の舞台は月かな。まいくろうぇーぶそうしんきちです?
ときに作中の拡張現実アプリは欲しいですね。数年前から、これからのゲーム業界は拡張現実の時代だと考えていたのに、いざ蓋を開けてみれば、流行ってるのはくだらないソシャゲばかりという悲しい現実。
ソシャゲに供給している資金をもっと拡張現実技術の発展に費やせば、ゲーム業界に限らず、さまざまな分野にも転用できてメリットを生むはずなのに、未来の莫大な利益が見えず、目先の小さな利益に捕らわれているゲーム会社やスポンサーは愚かで度し難い。まったくもって、脳が狭い!