とある飛空士への誓約 2 (ガガガ文庫) 犬村 小六 森沢 晴行 小学館 2013-02-19 by G-Tools |
エアハント士官学校飛空科の「模擬空戦」において、驚異の記録を更新中のイリア・クライシュミットは、士官候補生たち「エリアドールの七人」の中では突出した存在となっていた。比して、坂上清顕は、互いに撃墜王の父を持ちながらも、イリアに実力の差ばかり見せつけられ、悩み、焦る清顕。
きみがいるから戦える
七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語
七人のキャラクターそれぞれに人間ドラマが描かれて、キャラの背景や奥深さを増していました。
模擬戦で圧倒的な戦績を叩き出すイリアに対して、人並み以下の凡庸な成績しか残せない清顕が、空で戦う理由を見出して、自分の殻を破って飛空士として成長していく姿が晴々しかったです。
ときに悩み、苦しみ、迷いながらも、友人との生活の中で将来を見据えていく登場人物たちに魅せられた。
元々エリートであるイリアやバルタザール、順調に成績を伸ばしていくかぐら達に比べ、実技の成績が伸び悩み、ライバルであるイリアに対して鬱屈した思いを抱えていく清顕の姿がもどかしい。
「ウラノスを滅ぼす」という目標を掲げながらも、戦いの場で引き金を引くことを躊躇してしまう清顕でしたが、ミオとのデートをキッカケに自分の壁を越えていくところがとても男のコで初々しかった。
最初に出会った頃ほどのわだかまりは清顕とイリアにはすでにないものの、勝手なマスコミが放っておかず、秋津と帝国を巻き込んで二人の因縁の対決を煽るような周囲の風潮が苛立ちますね……。
イリアとしても父親を喜ばせて、自分を認めて欲しい一心で、清顕との戦いを望む思いが切ない。
清顕とイリアの実際の対決は、怨みや憎しみとは程遠くて、お互いへの称賛が溢れていて素敵でした。
表面は仏頂面のイリアですが、不器用な彼女なりの女の子らしさや優しさといった、人間らしさが見え隠れしてカワイイイキモノ化してました。クソ親父は育て方を間違ったよなー本当はこんなに可愛いのに。
七人の中に潜む、旧王国の王位継承者とウラノスのスパイ・ハチドリの正体は、さほど意外でもなくほぼ予測通りだったものの、それが霞んでしまうくらいの衝撃が結末に待ち構えていて胸が痛みました。