再生のパラダイムシフト リ・ユニオン (富士見ファンタジア文庫) 武葉 コウ ntny 富士見書房 2013-01-19 by G-Tools |
未曾有の大災害によって一度、崩壊した世界。人類は潜水都市で暮らし、残留体という謎の敵の脅威にさらされながらも生き延びていた。風峰橙矢は過去の事件によって、普通の高校生として当たり前の日常を過ごすことを拒絶し、残留体との戦いに救いを見いだそうとする。
その想いは力となる
想像を現実のものとする思考昇華を用いて怪物と戦う少年少女たちのSFアクションファンタジー。
設定そのものは決して新しくはない王道中の王道ですが、クオリティが高くて面白かったです。
思考昇華と呼ばれる技術を備えた武装研究員の主人公・橙矢が、記憶喪失の少女・ほのみと出会い、都市を襲う残留体との戦いの中で、過去のトラウマを乗り越え、絆を結んでいく姿に感動しました。
これなら大賞受賞も理解できる。っていうか、もっとこういう大衆受けする作品をF大は大賞にしようよ
無垢で明るくて人当たりのいいヒロイン・ほのみのキャラに和みます。真面目でお人好しな橙矢とのカップリングも初々しくて、人懐っこいほのみとの距離感に戸惑う橙矢の様子も微笑ましかったです。
記憶喪失のほのみを保護し、所属する特別調査室に招き入れ、同僚の美世やノボル、姉のハルと、ひとりぼっちだった彼女の人間関係が徐々に広がって、周囲に馴染んでいく光景もこころ温まりました。
人々の生活に欠かせない涙晶というエネルギー体を盗む窃盗犯を追いかけていくうちに、残留体と呼ばれる怪物との戦闘が激化していって、次第に明かされていく真実は残酷で切なくなりました。
お互いに大切に思っているにも関わらず、我が身を儚んで、自分の元から去っていってしまったほのみを、橙矢がどんな熱い説教で連れ戻すのかと思えば、『愛の告白』ですからね、イケメンだわこいつ。
作品全体は、ソツがなく、欠点はこれといってない。とても優等生なんだけど、どこか物足りない感。
いや、これが王道なんだよな。これに文句言ってるから私はマイナー厨と呼ばれてしまうんだよな。
しかし、作者さんは、いままで海外で過ごしてたのに、ここまで王道を理解して、再現できる能力はすごいな。若いし、しっかり経験を積んだら一気に化けそう、今後の成長に期待します。