神様のメモ帳 杉井 光 メディアワークス 2007-01-06 by G-Tools |
【高一の冬、僕と同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕んだ凶悪ドラッグ《エンジェル・フィックス》。すべての謎は、部屋にひきこもる少女探偵アリスの手で解体されていく】
「神様のメモ帳の、ぼくらのページにはこう書いてあるのさ。『働いたら負け』ってね」
生れながらの勝者だというのか!?
ラーメン屋の裏路地にどこからと集まってくるニートたちと、
雑居ビルに住むニート探偵を名乗る美少女の物語。
なんとなく高校には通っているけれども、人間関係が苦手で人生に目標がもてない少年ナルミとニートたちが、街に広がるドラッグの謎を解き明かしていきます。
私もいつかはニートになりたい。頑張ってはやく勝ち組に・・・。
ミリオタの大学生やボクサーくずれのパチスロ師、ヒモ青年、
個性的なニートたちが「生き様」と語るニート観が面白い。
とくに生きてる目的なんてわからないけれど、かといってひきこもりになるでもなく、いつも陽気で自由気ままに自然体。
毎日が楽しそうな彼らの生き方が和みます。
いまのストレス社会や暗い世の中を変えてくれる再生の希望は、ニートなのかもしれない。増えるぞ燃え尽きるぞニート!
自称ニート探偵のパジャマ少女・アリスは、ニートにこだわらなくてもネット探偵か、情報屋って言えばいい気がしますが、
自分自身を『ニート探偵』と定義するこじつけが凄いな。
ナルミ少年との相性としては、GOSICKのヴィクトリカと一弥みたいな。言わば現代版和製『知恵の泉』ってところ。
ボクっ子口調とドクターペッパー偏愛っぷりがたまりません。
ニートたちの愉快な日常生活を体験して、彩夏とも打ち解けて、徐々に前向きになってきていただけに、事件発生後のナルミの心境は辛いです。
一旦、落ち込んでからラーメン屋の姐さんのティラミスによって引き上げられてからは、もう意地ですね。
仲間を巻き込み、自分を犠牲にしてまで、おそらくは誰も救われないだろう真相へ突き進む。ここの熱いノリが好きです。
心の痛みと切なさの最後には、きれいで温かい救いもあり、
けっして鬱に浸りきって自己陶酔して終わり、とならず現実に戻らなければならない厳しさも訴える見事なラストです。
ミステリとしては、改善の余地ありですが、青春モノとしては、まったく良く出来てるんじゃないんでしょうか。良作でした!
ちなみに本代を節約するなら、高校、大学の学校図書室よりも市立図書館でリクエストした方が認可は簡単ですよ。
GOSICK〈6〉ゴシック・仮面舞踏会の夜 桜庭 一樹 by G-Tools |