祝もものき事務所3 (C・NOVELSファンタジア) 茅田 砂胡 中央公論新社 2012-11-29 by G-Tools |
あの無能で怠惰な百之喜に、なぜ真面目で前途有望な雉名や隠しワザ満載の鬼光、かわいい顔して武芸百般の犬槇と舞台の上なら千の仮面を持つ芳猿たちは協力するのだろうか?まして―超有能で超美人、引き手あまたは絶対確実の凰華が百之喜ごときの秘書に甘んじてくれているのか?
神さまの道具は気まぐれ屋
無能な探偵"もどき"百之喜太朗と友人たちの織り成す、スラップスティック・人間ドラマ。短篇集。
偏見や欲望にまみれた人間の醜悪さがあからさまで、盛大にもにょもにょするー!
無能で役立たずな百之喜太朗を取り巻く、有能で魅力溢れる友人たちが、それぞれ遭遇した不可解な事件を通じて、どうして彼らが太朗を頼りにしているのか、その理由が描かれるのですが、幼馴染同士、お互いの信頼と理解が通じ合い、損得を抜きにして助け合う姿が微笑ましく心温まりました。
犬槇くんの事件は、もっとも茅田砂胡らしいエピソードですね。強くて精神的に自立している女性を、碌でもない男が甘く見て手を出して、痛い目にあうというお約束をニヤニヤしながら読んでました。
芳猿が不運にも巻き込まれた空き巣事件は逆パターン。外面の良い女子が男を食い物にして……というものでしたが、良家のお嬢様が軽い気持ちで程度の低い犯罪に走るんだから女は恐ろしいなぁ。
鬼光の恋愛観は、私としては非常に頷ける、常識的な男の平均的な価値観だと思うんだけど、ただ女心がわかってないだけなのか。最近の女の子が理解し難い存在になったなぁと思わされる話だった。
雉名さんがこのシリーズでは一番気苦労を背負わされてるような気がしますね。のほほんとしている百之喜に振り回されやすい性格だけど、絶対に見捨てないのだから、なんてツンデレでいい人なんだ。
幼馴染ズに比べると、付き合いの浅い花祥院さんが百之喜の実用性に疑問を抱くのはよく分かる。すぐに彼の特異性を身を持って体験して背筋を震わせることになるのだけど、助かってホッとしたわー。
『神さまの道具』としての百之喜の特性よりも、幼馴染ズは裏表のない彼の人徳に救われているところもあるんじゃないのかな。花祥院さんも百之喜に影響されてもっと力を抜くようになればいいのだけれど。