煌帝のバトルスローネ! (角川スニーカー文庫) 井上 悠宇 ぎん太郎 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-12-28 by G-Tools |
謎の連続傷害事件に遭遇し、瀕死となった零司を救ったのは、“憤怒の竜姫"イラだった。彼女の力を身に宿すことで生き返った零司だったが、異世界の王たちによる皇位継承戦争に巻き込まれることになり!?
怒りの力が世界を救う
異世界の王候補たちの皇位継承争いに巻き込まれた少年が繰り広げる異能バトルロイヤル。
七つの大罪とか、七人の王とか、バトルロイヤルとか、実に中ニ病ソウルをくすぐる設定だ!
人に嫌われない偽善者であろうとするため怒ることのできない主人公・零司が、異世界の皇位継承争いに巻き込まれ、瀕死の重傷を負ったところを"憤怒"の竜族の姫イラに救われ、彼女の代理として戦いに身を投じるうちに、眠っていた激情を呼び覚まして人間性を取り戻していく姿に心が震えました。
お人好しで怒ることを知らない平和主義者な零司が、短気で活発な好戦的なイラのワガママや世間知らずに振り回される凸凹コンビっぷりが笑いを誘います。正反対なキャラだとやはりバランスがいい。
零司を救った代償として力を失った彼女の代理として、他の王候補とバトルしなけいけない零司ですが、争いごとを避ける性格の彼は、決闘の場に立ってもどこか覇気が足りなくて、やきもきさせます。
"憤怒"の感情を魔力に変え、ほぼ最強の能力を使えるのに、怒ることができない零司はその力を引き出せなくて、彼を怒らせるためにイラや幼馴染の萌花がイタズラを仕掛けるのがコミカルでした。
零司が優柔不断で迷っている間に、取り返せない事態が起こってしまい、初めて"憤怒"に近い感情を得るところは辛かった。それでも相手を殺さないにようにするのだから、お人好しも極まれりだなあぁ。
自分のためにではなく、他人のために怒れることで、零司がようやく血の通った人間に見えました。
戦いなら、ちゃんと能力を使えるなら零司とイラのペアが最強だろうけど、ライバルの王候補もそれぞれチートスキルを備えているので、そうした相手のスキルに対してどう対処していくかが見物です。
先代の煌帝を暗殺した犯人の正体など、舞台背景にも裏がありそうなので、今後の展開に期待です。