ゼロの使い魔〈10〉イーヴァルディの勇者 ヤマグチ ノボル メディアファクトリー 2006-12 by G-Tools |
【母を救い出そうと、単身母国ガリアに向かったタバサ。ところが、見知らぬエルフによって囚われの身に。それを知ったサイトたちは彼女を助け出そうと決意するが・・・】
「情けねえとこ見せられねえだろ!一応、俺は男なんだよ!ああそうさ、なんの因果か男に生まれちまったんだよ。だから無理しなきゃ、格好つかねぇだろ。」
本当に君はバカで男の子だな!
囚われのタバサ姫を救い出す、勇者サイトの冒険譚です。
ジョセフ王によってタバサが幽閉されたことを知ったサイトたちは、アンリエッタの静止を無視し、ガリアへ乗り込みます。
たとえトリスティンから反逆者として追われる身になろうとも、
彼らがタバサを救いに向かおうとするのは、何故なのか。
サイトたちの『友情』と、そして『勇気』が試されます。
しかし、どうしてこうサイトは『男の子』なんでしょうかね。
普段はエロエロで、バカだし、ウジウジと悩んでばかりだが、
それでも根っこはどうしようもないほど『男の子』で、利益も褒賞もなかろうと、すべてを投げ捨てて、ただ自分の魂の衝動に従うままに、己の心の中に抱く"勇者"の導くままに突っ走る!
いつものごとく格好良すぎて、何故だか嬉しくなっちまいます。
サイトを引き止めるアンリエッタも、あそこで涙をこらえて送り出してくれなかったかなぁ。どんな鎖をつけても、それを断ち切って行くのがサイトじゃん。そういうところに惚れたんじゃん。
反対に、毅然として"筋"を通そうとするルイズが凛々しい。
貴族という肩書きに固執していたルイズも、自分の中にある本当の『誇り』というものに目覚めて成長しつつあります。
ギーシュやマリコリヌといった学院メンバーの意外な奮闘ぶりや、キュルケとルイズの友情話もあったりがよかったですが、
コルベールとアニエスの復讐劇にちゃんと決着をつけてくれたのを評価したいですね。ここは曖昧に流しちゃ駄目でしたよ。
あと外伝できゅいきゅい言ってたシルフィードが、本編に登場してきたのも実に美味しいな!
いつものラブコメ一辺倒じゃなくて、ストーリーそのものが面白かったです。ドラクエを始めとするRPGの王道シナリオですが、物語から訴えかけてくるテーマが強くて深かった。
『勇者』ってどういう人物なんでしょうかね、皆さん。
今回、サイトはどう見ても勇者でしたが、つまるところ「調子のイイ奴」ってことでしょうかね?
「お前ならきっと倒せる」とか、「君の力が必要なんだ」とか、
周囲に持ち上げられて、雰囲気に流されているうちに逃げられなくなって、本人もなんでだかその気になっちゃってる奴。
「勇気は男の子なら誰でも持っているもの」とあとがきでも言ってることには賛成です。特別な力のあるなしは無関係。
じゃあ、あとは『勇者』になるのはシチュエーションだけだよ。
助け出されたタバサの泣き顔を仲間たちの笑顔が囲む光景に、思わず目頭が熱くなりました。
孤独と絶望の中で凍っていたタバサの心もついに溶け、仲間たちの絆もレベルアップしたところで、次回がさらにどんな展開を迎えるか、これからが楽しみになってきました。
ああ『イーヴァルディの勇者』はマジで読んでみたいなぁ・・・。