魔遁のアプリと青炎剣 (電撃文庫) 天鴉蒼 ねりま アスキー・メディアワークス 2012-12-08 by G-Tools |
対立する巨大メーカーの影響で東西2区に分裂した都市。その中央に位置する高天原学園では、能力者が互いの個人成績を競い合っていた。東区傘下の青龍院に所属する祇堂拓真の前に現れた謎の転校生・奏咲ユマは、学園生に必要不可欠なある能力を失っていて―。
その風は、未来に吹いている
様々なアプリを駆使してランクを競い合う、異能を持つ少年少女たちの近未来ガジェットアクション。
学園異能に近未来サイバーパンクの要素を融合させてバージョンアップした作風で、これは新しい!
生徒同士が東西2区に分かれて競い合う学園で、主人公・拓真が転校生・ユマと出会い、彼女の秘めた強大な力を利用しようとする悪人たちから守るため、仲間と共に奮闘する光景に熱くなりました。
登場人物たちが己の身体と技術を駆使し縦横無尽に都市や遺跡を駆け抜ける姿に胸が踊りました。
学生全員異能者と言っても、強靭な肉体を持つ『素戔鳴』、鋭敏な五感を持つ『月夜見』という二種類しかないと聞くと、とても単純に思えるんですが、学園のスポンサーについている二大企業が提供する様々なアプリやガジェットが組み合わさることで、ド派手な異能バトルが展開されるところが新しい。
特にAR(拡張現実)の技術を子供たちの視点で活用した世界観がユーモラスで面白い!
アルバイトや課題で入り組んだ都市部や遺跡内部を走って、飛び回るアクションシーンは、ベースジャンプやフリーランニングといったエクストリームスポーツに通じるダイナミックさと痛快さがありました。
トレジャーハントで旧時代の遺跡に潜るのもロマンがありますね。ライバルよりも目的地にたどり着くため、アプリやガジェットを用いた情報戦、騙し合い、駆け引きも読者の意表をついて飽きさせない。
メインキャラクターは奇をてらわないシンプルな王道キャラで、熱血少年の拓真やドジっ子ヒロインのユマ、勝気系美少女の彩華、オタクの優介といった、クセのないわかりやすいところも好感が持てる。
学園異能というジャンルに飽きてきたラノベ読みにも新鮮で、これから学園異能を読み始めるラノベ入門者にもオススメです。物足りないところもあるけど今後に期待が持てる新人が出てきてくれたかな。