魔法の材料ございます11 ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚 (GA文庫) 葵 東 蔓木 鋼音 ソフトバンククリエイティブ 2012-11-15 by G-Tools |
「がるるるる、あいつの魔力だ!魔神が来た!」旦那様が不在の朝、そう言って飛びだして行ったアーテちゃん。さらには、アーテちゃんと入れ替わるように、魔法使いタバランが町にやって来ました。目的は…私!?旦那様、きっと大丈夫ですよね!? 魔材、クライマックスです!
全ての命に幸あれ
魔法を使う触媒となる魔法材料を商う店のぐうたら店主とお転婆なお姫様の冒険活劇。完結。
思えば、お姫様とドラゴン退治に出かけるファンタジーだったのが遠くまで来たなぁと感慨深い。
バルシュタット公と対決する意志を決め、王都へ赴いた三代目が、カーライルの起こした内紛に巻き込まれ、さらには魔神が復活して、突然の危機から世界を救うため奮闘する姿に手に汗握りました。
誰もが幸せになれる世界平和を目指して、陰謀渦巻く嵐を駆け抜ける三代目の生き様に惚れます。
リリアーヌと三代目に功績を積ませるため、捨て駒に使われたカーライルとタバラン、天空神官たちの逆襲は、それこそ身勝手な癇癪もいいところだけれど、サフィーラを利用したことだけは許せないなぁ。
彼らが企んだ計画は世界を滅亡に追いこみかねない大惨事を巻き起こして、尻拭いをさせられる三代目の苦労が身に染みる。魔神との決着はあっけなくも、意外性ある真実が明かされて驚嘆されられた。
しかしそんな世界の危機さえもバルシュタット公の手の内で、彼の計略の底知れなさに慄きます。
完璧に進むかに思えた計画に、タトラの捨て身の一撃が一矢報いてくれて溜飲が下がりました。
バルシュタット公も、哀れな末期でした。過去に囚われて、新しい生き甲斐を見出だせなかったのかと、無念でならない。自分を改める時間もあっただろうに純粋すぎて間違えてしまった姿が悲しかった。
それにしても、えらく詰め込んだなぁと唸ってしまうほどのストーリー密度の濃さに圧倒されました。
そして死んではいけない人の多くが、儚くも命を散らしてしまった。僅かに蘇った者がいて悲しみが拭われたのがせめてもの救いでしょうか。結ばれた三代目とサシャの初々しさについ笑顔が溢れます。
シリーズ通して異例づくしのストーリー展開をした物語でした。次回作は一体何を見せてくれるのか。