![]() | ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語 定金 伸治 中央公論新社 2006-12 by G-Tools |
【19世紀末、叡理国。東洋人として初めて王立技術院に講師に赴任したネル。だが、研究員の募集に応募してきたのは、情熱はあるが破天荒な少女エルフェールのみ。しかも彼女は王女だというのだ!?】
「わたしは、新しい技術が見たいんです!前進するものが見たいの!切り開くものが見たいの!新しい世界が見たい!」
変態王女、暴走!暴発!大爆破!
頼りなさげな教授と押しかけ研究員の少女の空想科学。
真空からエネルギーを取り出す新技術『水気』を応用した『打ち上げ花火』の研究にまつわるお話です。
『制覇するフィロソフィア』で熱い男たちの世界を魅せた作者が、今度は技術者、研究者たちによる熱い世界を描きます。
女性技術者が、男性たちから蔑まれる産業革命の時代。
王立技術院に就任した主人公ネルに憧れて、ストーカーまがいの行為の末、強引に研究員になってしまった王女エル。
十八歳で博士号を取った才女でありながら、性格は感情的で喜怒哀楽が激しくて、その行動はいつも体当たりで破天荒。
実験装置をなで回しては、えへえへ笑ってる変態です。
なんていうか、科学への情熱が行き過ぎちゃったDQN女。
しかし、未知の技術、未知の研究に憧れるその熱意は本物。
国際花火大会を目指し、執念深さを根気強さに繋げ、失敗を繰り返しながら、髪はボサボサ、白衣は汗でドロドロになるまで『花火』開発に打ち込むその姿が、まさに活き活きと輝いてとても魅力的。
技術的な障害と悪意ある妨害。それらに生来の負けん気と突拍子もない発想力で次々にブレイクスルーを成し遂げていく。
読んでいるうちに、何を見せてくれるんだろう、何をやらかしてくれるんだろうと、ワクワクする気持ちにさせてくれました。
そして最後にエルたちが打ち上げた花火は、優しく人々の心に夢と希望を残す、身震いするほど美しい情景でした。
私も技術者の端くれとして、技術開発にとりつかれたこの研究中毒者たちの生き様が眩しく、非常にうらやましく感じました。
優れた技術は人の心を揺さぶり、感動させることができる。
そんな新技術への憧れと情熱が込められた作品でした。
![]() | 制覇するフィロソフィア 定金 伸治 by G-Tools |
この話は、「制覇するフィロソフィア」とは、違った意味で熱い物語ですね。
研究者魂。というものを描いていましたね。
西洋人の女性蔑視、東洋人への差別。
そういったものも描かれており、中味も奥深いものになっていましたね。