![]() | 完璧なレベル99など存在しない (電撃文庫) 周防ツカサ 明坂いく アスキー・メディアワークス 2012-11-09 by G-Tools |
ある日ゲーマー少年・裕貴が目覚めると、そこは異世界だった。自分がいままでプレイしてきたゲームのキャラクターたちが集まっている状況に戸惑う彼は、少女騎士・シャノンに助けられながら、何とか現実に帰還する方法を模索しはじめる。森の中で遭遇した怪物との戦いで裕貴は驚愕の事実を知ってしまう。
千人の勇者を導く、一人の廃人
古今東西のRPGが融合した世界で主人公がキャラを率いてクリアを目指すゲーミングファンタジー。
並外れたゲームへの愛情、特にRPGへの情熱が詰まって、弾けて、ぶっ飛んでました。
様々なRPGの登場人物とモンスターがごちゃ混ぜになった世界に飛ばされた一般人の少年・裕貴が、ゲームの勇者たちの信頼を得ながら、彼らと共に世界の謎を解き明かしていく光景にワクワクします。
俺TUEEEですが、強くても、それだけではどうにもならない様を描いた、まさにアンチ無双ものでした。
周囲のキャラは初期レベルばかりの中で、裕貴だけカンストのレベル99。最強だけれど、何故か彼ではモンスターを倒せなくて、戦闘に加われない代わりに、攻略情報を教えたり、互助組織を作ったり、軍師として千人の英雄たちを導き、キャラを操作するプレイヤーの立場からゲームのクリアを目指す展開が面白い。
冒険を進めるうちに次第に信頼できる仲間も増えて、友情や愛情を育んでいく姿も微笑ましかった。
集まった勇者の中には性格の嫌な奴も居るんだけれど、それはゲームの製作者がそのようなキャラ付けをしただけで本人には罪がないと相手の侮辱を許すどころか、そいつが危機に陥れば救おうとするのだから裕貴のゲーム愛には感心する。どんなキャラでも彼にとっては憧れの英雄なんでしょうね。
大好きなキャラ達を生かすことが裕貴の指針になって、だからこそ仲間を救えなかったのは辛かった。
どんなに強くとも、ゲームシナリオで定められた強制イベントには介入できないプレイヤーの哀愁を感じました。システムには逆らえないから最強であっても不死ではないというのも忘れてはいけない。
ひとまずは困難を切り抜けたけれど、裕貴や英雄たちを影から干渉してくる何者かの悪意も垣間見えて、必ずしも順風満帆とはいえないのが逆に興味深い。さて次はどんな冒険を見せてくれるのかな。