ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫) 宇野朴人 さんば挿 アスキー・メディアワークス 2012-11-09 by G-Tools |
実戦経験を積むため、北域へと遠征することになる帝国騎士イクタたち。目指すは、大アラファトラ山脈に守られた軍事拠点、北域鎮台。野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇だと噂される、帝国最北の基地だった。しかし訓練気分の彼らを待ち受けていたものは、本物の戦場だった。
戦争は破壊の科学である
のちに名将と呼ばれる怠け者な少年の激動の半生を描く壮大な架空戦記。
味方の軍に無能な指揮官がいるだけで、こうも甚大な害悪を撒き散らすものかと憤激を隠せない。
遠征訓練として北の要衝・北域鎮台へやってきたイクタたちが、原住民族シナーク族の民族蜂起に巻き込まれ、仲間とともに無用な争いの最前線に立たされ危険や苦渋を味合わされる姿がやるせない。
無能な指揮官の無思慮と無策で次々と散っていく犠牲者たちの命の重みに胸が苦しくなる。
シャミーユに見込まれ栄達を望まれるイクタだけれど、出世欲のない彼はいつもののように詭弁を弄して逃げ回って、そんな彼が馬鹿にしていた権力によって振り回されるハメになるとは皮肉だった。
イクタたちが派遣された北域鎮台の司令官が最高にクズで胸糞悪い。シナーク族の武装蜂起も彼による民族迫害が原因で、起きなくていい戦争を起こしやがってこの指揮官早く死ね!と何度思ったか。
無能な指揮官によって一万以上の軍隊が山脈の各地で苦戦を強いられて、イクタたちも無謀な命令を強いられるんだけれど、その度に神算鬼謀と連携プレーによって切り抜けていくから痛快なんだ。
しかしイクタの手の届かないところでは、敵味方ともにおびただしい数の戦死者が発生して、それが相手への憎悪と怒りとなってますます戦況を過熱させる負の連鎖に陥っていく光景が辛くて痛ましい。
戦場では優秀な人材から死んでいく、帝国にとってそれこそが本当の損失なのに、効果的な作戦ひとつ提案できない指揮官連中は責任回避や自己保身にばかり走るのだから噴飯ものですよ。
いや、ホント今回は怒りしかわかなかった。これはイクタに早く出世して偉くなってもらわないと。しかし運命は彼の覚悟を待ってはくれないようで一難去ってまた一難とは、この作者ドSすぎるわぁ(褒め言葉)