ダウトコール ‐三流作家と薄幸執事の超能力詐称事件特別対策‐ (富士見ファンタジア文庫) マナベ スグル 桐野 霞 富士見書房 2012-09-20 by G-Tools |
不幸な勘違いにより名探偵に間違われてしまった少年・湊は、学園の聖女と崇められている美少女・茜に「他人の心を読む力」で生徒たちからお金を巻き上げている人物のトリックを暴いてほしいと頼まれるのだが
謎解きはラブコメのあとで
三流作家のお嬢様と薄幸執事の主人公が、乙女の園で起きる不可思議事件の謎を解く学園ミステリ。
今は無き富士見ミステリー文庫の香りが漂う一品でした。好奇心をくすぐるミステリの素晴らしさよ
不幸体質の主人公・湊が、名門女学院で起きた超能力を偽った詐欺事件の謎を暴いていくドタバタの過程で、雇い主であるお嬢様・茜と気のおけない探偵と助手のコンビになっていく姿に胸が躍った。
正直、トリックはどうでもいいねん。謎解きの過程で生まれるトキメキが富士ミスの醍醐味ですよ。
不幸体質な少年・湊が、平凡な男子高校生という肩書きとは裏腹に、偏っていても深い知識と鋭い洞察力を持っていて、十分に探偵役をこなせるポテンシャンルを見せてくれるから面白いんだ。
湊を名探偵と間違えて学園に連れ込んだお嬢様・茜も、生徒から慕われる憧れのお姉様という仮面の下に、ちょっと間の抜けたお転婆な一面があって、湊とイチャイチャした軽口の応酬が可笑しい。
どうみても怪しげな自称・超能力者がいて、生徒たちを騙して大金を巻き上げようと企んでいるのが明白なのに肝心のトリックが暴けず、手がかりも発見できず、捜査が行き詰ってしまうのがもどかしいな。
犯人から目をつけられて、事故に見せかけて狙われるようになってしまった茜を、湊が己の身を呈して庇っていくうちに、反撃の糸口を見出していくところは、なかなか盛り上がる展開だった。
待ちに待った謎解き解決編では、トリックそのものよりも、その暴き方がユニークで意表をつかれた。
まあトリックを見抜かれた犯人も、素直に大人しく捕まるわけはないと思っていたけれど、抵抗する犯人よりも、主人公サイドの人間のほうが周囲に被害を出しているって……爆発オチかよ。なんだこれ。事件を解いたら湊も用済みだけど、あれ、そのまま留まる……のか? こ、この理由なき不条理が富士ミスや!