輪環の魔導師10 輪る神々の物語 (電撃文庫 わ 4-34) 渡瀬草一郎 碧風羽 アスキー・メディアワークス 2012-08-10 by G-Tools |
神界の門より現れた異形の神、ボルアルバとその眷属を退けたセロ達。しかしその直後、世界各地に謎の光の帯が現れ、人々を襲いはじめる。聖教会の本拠、聖都ハルマニオスにその原因があると推測したセロ達は、英雄達の遺産を手に現地へと向かうが、そこには既に魔族の影が
終わりなき旅路の果てに
伝説の魔導具を身に宿す少年と、彼を導く仲間たちの冒険を描く異世界ファンタジー。
ついに完結したかと安堵する思いと、まだ終わって欲しくないと焦燥に駆られる気持ちでいっぱい。
聖神イスカの暴走により、世界各地で起こり始めた異変を止めるため、聖都に向かったセロ達が復活した神とウィスカたち魔族を相手に世界の趨勢を巡る戦いを繰り広げる壮大さに呻らされました。
これまでの長い旅の終わり、そしてまた旅が始まり、やがて伝説になっていく。これが歴史の重みか。
あくまで人間の願望を叶える存在でありながらも、人間の常識とは大きくかけ離れ、災害としか言いようがない事態を引き起こす、まさしく人知を越えた存在である聖神イスカの異様に慄きますね。
かつての英雄たちが人間には余る力として対抗する魔道具を用いて撃退したのが人間の賢さであるならば、戦いの後に残った力を巡ってお互いが争い合う結末を迎えてしまったのは人間の愚かさか。
そんな異形の神でさえ恐怖を抱かせたフィノのセロへの情愛の深さが相変わらず半端ねぇなぁ。
ウィスカとエスハールの狙いはこの世界や人間を本当に憂いたものだったのかもしれないけれど、だからといって取り返しの付かない方法で周囲を無視して強引に変えてしまおうとするのは独善だよ。
セロを愛するあまりに道を踏み外しかけたフィノを現世に掴み返すセロの愛が素晴らしかった。
物事の変化には責任が伴う。何をするにも神の力にばかり頼っていては、それでは大人に甘える子供と同然。神と対等になるためには、まず神から自立した世界を創りあげなければならないと思う。
セロたちの冒険の旅が、神話として語られる遠い未来がそうした世界であることを願ってやまない。
けど、このシリーズは続けようと思えばもっと続けられるよなぁ。ここで終わらせてしまうのは惜しい。