僕の学校の暗殺部 (ファミ通文庫) 深見真 ふゆの春秋 エンターブレイン 2012-07-30 by G-Tools |
深作零士は同じ高校に通う美少女、未但馬裕佳梨が、人を殺す場面を目撃してしまった。人間社会に徒なすとある存在を密かに抹殺する「暗殺部」。彼女はその部員だった。そして零士は、そんな彼女に恋をしてしまった。
放課後の暗殺者
暗殺部に入部し、銃をもって殺し合う世界に足を踏み入れた少年少女の恋と闘争の思春期物語。
うわあ、なんだこれ血飛沫や脳髄が飛び散る容赦ない殺戮劇なのに、青春小説としてまとまってる。
社会に潜み人間に害をなす"いるか人間"を殺すため、全国に極秘裏に創設された暗殺部に入った主人公・零士が、壮絶な修羅場をくぐり抜けて暗殺者として成長していく姿に息を呑みました。
青春を殺し合いに捧げた若者たちの、線香花火のように儚くも苛烈な生き様が胸に沁みます。
暗殺部のエース・裕佳梨の殺人現場を目撃し、勢いで入部してしまったものの暗殺者になるためのハードな特訓に閉口する零士でしたが、段々と暗殺者として鍛えあげられていく実感を得るごとに自信をつけて、コンプレックスであった背の低さを克服して精神的にも強くなっていくところがよかったです。
厳しいけれども零士のことをそれとなく気にして、適切なフォローをしてくれる先輩たちも素敵だった。
邪悪な"いるか"に寄生され理性や常識を失い、些細な事で人間に危害を加えるようになり、悪徳の限りを尽くす"いるか人間"たちの悪逆非道っぷりは不快感でいっぱいでした。これは殺さないとマズイ。
"いるか人間"との戦いを前に裕佳梨と零士の仲が急接近したのは、正直、嫌な予感しかしてなかったんだけれど、案の定、二人を襲った悲劇はあまりにも救いがなく、唖然として言葉を失いました。
いつもの深見真作品のように娯楽作品のようにも受け取れるし、何か哲学を訴えかけてくるようにも思えるし、これはどう受け取ればいいのか。口の中で何度反芻してもうまく飲み込めないもどかしさ。
主人公もヒロインもすごい淡白で、それが作品に独特な雰囲気を醸し出しているんだけれども、それだけにキャラの個性が希薄に感じてしまうのが否めない。どうやら私には『シークレットハニー』みたいな、わかりやすい娯楽作品の方が向いているようです。