魔法科高校の劣等生〈6〉横浜騒乱編〈上〉 (電撃文庫) 佐島 勤 石田 可奈 アスキーメディアワークス 2012-07-10 by G-Tools |
秋。『全国高校生魔法学論文コンペティション』の季節がやってきた。日頃の研究成果を魔法装置を使った『実演』でプレゼンテーションするこの催し物は、魔法学、魔法技能、先端魔法技術を披露する最高の舞台だった。達也の類い希なる頭脳と能力と、その『成果』を狙い、暗躍する組織の影があった。
研究者の憂鬱
現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。
横浜で開催される論文コンペのための論文作成の助っ人として駆り出された達也が上級生たちを支える傍ら、大陸からの産業スパイが研究成果を狙って様々な妨害や襲撃を仕掛けてきて、争いごととは無念のはずの発表会までもが次第に波乱に満ちていく張り詰めた情勢に息を呑みました。
級友たちの恋愛模様も進展を見せ始め、季節とともに人間関係の移り変わりを感じさせました。
価値の高い研究に携わる立場になれば、その成果を狙う者が現れるのは当然なんだけれど、その刺客が同じ高校に通う生徒というのは、普段どれだけ達也が無意識に敵を作ってしまってるかが窺える。
達也の主張は正論なんだけれど、世の中にはその正論を押し通すほどの力や才能がない人の方がたくさん溢れていて、ときとして達也の正論は持てる者の傲慢とも聞こえてしまうのが悩ましいなぁ。
しかし、第一高校の生徒というだけで、一般人よりも優れた知性を備えているのに、どうしてこう立て続けにテロリストだの、スパイだのに利用されるんだろうかと内部スパイたちの不甲斐なさには呆れる。
達也たち発表者の護衛チームに任命され奮い立つ幹比古や、友人のために戦う力を得るためにエリカと特訓を開始するレオンハルトなど、達也と深雪を取り巻く周囲の人々の動きも興味深かった。
論文コンペの前に一番の波が過ぎたと達也ならずとも一息つく展開でしたが、遠からず訪れるであろう二番目の波はさらに大きそう。学生の論文大会ひとつとっても、形を変えた国家間のパワーバランス、技術競争と結びついているのがこの作品の世界観のすごいところですね。大人たち仕事してください。
さて、次回は舞台をようやく横浜に移動しての論文コンペとなるわけですが、発表そっちのけでバリバリ戦闘シーン満載なんだろうなぁ。