異能バトルは日常系のなかで (GA文庫) 望 公太 029 ソフトバンククリエイティブ 2012-06-16 by G-Tools |
俺を含めた文芸部の五人は半年前、とてつもない能力に目覚めた。そして壮大なる学園異能バトルの世界へ足を踏み入れ――なかった! ?異能に覚醒してみたものの、日常は完全無欠に平和だ。だから俺たちはこの超級異能を、気軽に無駄遣いすることに決めた。
異能は格好良ければそれでいい
平凡な日常のなかで神スキルを無駄使いする少年少女の厨二病全開の新・異能バトル&ラブコメ。
これはいい厨二病。学園異能ものでもなく、日常雑談系でもなく、ちょうど両者のいいとこ取り。
ある日、突然異能に目覚たものの、バトルも事件も何も起きない平穏な日常の中で異能を持て余した主人公とヒロインたちが、その異能を好き放題に下らないことに費やしている光景が愉快でした。
痛々しいけれど格好良い厨二病の素晴らしさに共感します。異能に憧れない男の子はいません!
絶賛厨二病の真っ只中にいる主人公・寿来の言動のむず痒さがなんとも言えません。
時間を操作したり、万物を創造したり、全属性を支配したり、チート級の異能を授かった文芸部のヒロインたちと比べると、あまりにも役立たずでしょぼい能力であるにも関わらず、異能バトルものにおける選ばれし者ポジションになりきって自己陶酔の極みにいる彼に相応しい言葉は、厨二、乙!
異能を得ても変わらない日常に退屈して、それぞれの二つ名を考えたり、古今東西の厨二病設定の作品から題材を借りてきてトークしたり、元ネタを知っていると苦笑できるオタクネタがてんこもりです。
厨二病は現実ではダサいけれど、でもやっぱり空想の物語では格好良いものですよね。厨二病の自覚を持ちつつも、それでも異能に魅せられる寿来の憧れは、簡単には否定できない男のロマンですよ。
そして自らが望まないにも関わらず、自然界のバランスを壊してしまいかねない強大な異能を持ってしまった不安や恐れをギャグに変えてくれる寿来の存在に、ヒロインたちがどれだけ救われてるだろう。
厨二病をバカにされつつも、周囲の女の子たちの心の支えになっている姿が微笑ましかったです。
寿来をボロクソに貶しつつも隠れ厨二病な灯代がツンデレ可愛い。今後どんな泥沼関係になるのか楽しみ。