ダフロン

2012年06月09日

天鏡のアルデラミン ねじ巻き精霊戦記/宇野朴人

4048865595天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)
宇野 朴人 さんば挿
アスキー・メディアワークス 2012-06-08

by G-Tools

隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている、一人の少年がいた。彼の名はイクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。

 時代が求めた英雄

 のちに名将と呼ばれる怠け者な少年の激動の半生を描く壮大な架空戦記。

 剣や銃ではなく頭で戦う。久しぶりに骨太な世界観の仮想戦記ファンタジーが出てきました。
 隣国との戦争が続くカトヴァーナ帝国で暮らす怠け者で女好きな主人公・イクタが、ひょんなことから軍人となり、秘めた智謀と才覚で戦場に旋風を巻き起こし、仲間とともに成り上がっていく展開にワクワクします。
 人間のパートナーである精霊を崇拝する宗教と真理を見出そうとする科学の対立も興味深い。

 士官候補生となるための試験を受けにいく途中、乗っていた船が座礁し、かろうじて救命ボートで命を拾ったイクタを始めとする候補生5人と、たまたま乗り合わせた皇女シャミーユたちに結ばれる絆が運命的。
 運悪く漂着してしまった敵地から脱出するためにサバイバル生活を繰り広げ、敵国の兵士との遭遇戦を切り抜け、国境線を越えるまでの間に、次第に強い信頼関係が築かれていくところに胸が熱くなります。

 皇女を救った英雄として自国に戻った5人を待っていたのは、同僚軍人からの嫉妬と羨望で、様々な嫌がらせを受けるのだけれど、イクタが不遜な態度を取り続けるものだから余計に反感を買って、ついには実戦で痛い目をみせてやろうと企む不良軍人まで現れて、始めから勝てない勝負を仕掛けられるが、そこで思わぬ知略を尽くした部隊の采配を見せて、返り討ちにしてしまう光景にはスカッとしました。

 イクタの圧勝で終わるかに思えば、予想外のハプニングもあったりして決して最後まで飽きない。
 古臭くて硬直化した戦場に新しい視点での戦術戦略論の風を吹きこんで、一手も二手も先読みをして展開していく戦況が見所。この手の戦記ファンタジーでまだ新しいことをやれるのかと驚きました。
 イクタだけでなく、彼に負けじと自分の力を磨くのに余念がない仲間たちの成長や活躍にも期待したい。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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