月花の歌姫と魔技の王 (HJ文庫) 翅田大介 大場陽炎 ホビージャパン 2012-05-31 by G-Tools |
魔法と科学、双方の力を持つ少年ライルは、科学時代を推し進めようとする幼なじみの貴族令嬢マリーア、そして偶然出会った魔法時代の象徴「幻想種」の少女ルーナリアの間で揺れ動く。2人の少女、2つの時代。世界を変える力を持つ少年が選んだのは果たして!?
魔法と科学が創りだす未来
技術革命を起こした「最後の魔女」の弟子である少年が創る魔法と科学の未来を描くファンタジー。
これは面白かった。こういう科学と魔法の入り混じったファンタジーは大好き。
魔法の時代から科学の時代への過渡期にあって、魔法と科学両方の力を持つ主人公・ライルが、二人の美少女とともに、世界を変える力を巡る陰謀に巻き込まれるなかで自分の信念を貫く姿に胸躍る。
スケールの大きさと世界観の広さがワクワクさせてくれる魅力的な空想科学ジュブナイルでした。
稀代の天才科学者であった「最後の魔女」の弟子であり、本人も類稀な天才少年であるライルと、彼に拾われた幻想種の少女ルーナリアとの心の交流が微笑ましくて、ほのぼのと和みます。
故郷と同胞を滅ぼされ、己を死人と思い込むルーナリアが、ライルのお節介で徐々に人間らしさを取り戻して、余計な干渉をしてくるライルに苛立ちつつも次第に気になり始めてしまうところが初々しいなぁ。
ライルの幼馴染でもあり、彼に想いを寄せるお嬢様マリーアも、ライバルの出現に表面では泰然と構えてるんだけれど、裏では狼狽えて焦りまくってて、みっともないほど悶え悩んでる姿がいじらしい。
世界のパワーバランスを一変してしまうほどの兵器を目の前にし、科学と技術の正しい在り方を求めて行動するライルの科学者としての倫理観の気高さ、高潔さに心を打たれました。
失われた魔法を使いこなすルーナリアだけでなく、最新兵器で武装したマリーアも、ただ守られているだけのヒロインではなく、ライルをバックアップしあって力を合わせて戦う姿が凛々しかった。
ライルを巡るライバル同士でありながらも、戦友としてお互いを認め合っているルーナリアとマリーアの女の友情もさっぱりと清々しくて心地よかった。続編は出ないんですか? 私、気になります。