ダフロン

2012年05月31日

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける/森橋ビンゴ

4047280771東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)
森橋ビンゴ Nardack
エンターブレイン 2012-05-30

by G-Tools

自分のやりたい事が分からずに迷う。小説家という夢を既に実現してしまっている東雲と自分を比べて、漠然とした焦燥に駆られる英太だが、東雲と過ごしてきた時間が、彼の望む未来をほのかに照らし始める……。もどかしく苦いラブストーリー、決心の先へ。

 永遠に刻まれる想い

 長編小説を書けない作家少女と男子高校生の甘く切ないラブストーリー。

 誰も彼もが恋に悩み、恋に苦しい思いをしていて、それでも前に進もうとしている姿が愛おしい。
 3年生になり、大学進学を考えている東雲侑子とは違い、未だに進路が定まらない主人公・英太の元に、同級生や下級生たちから次々と恋愛相談が持ち込まれ、彼らに関わっていくうちに恋人のために、夢のために自分が何をすべきか、将来の道を見出していく英太の決意が素晴らしかった。

 すでに作家として立派に活躍している東雲侑子と比べて、何の取り柄もない平凡すぎる自分に劣等感を抱いてしまう英太の気持ちは仕方がないよなぁ。男としちゃ、女に上をいかれてるのは辛いわな。
 しかし、それで終わらずに彼女に相応しい存在になろうと願い。それまで何をするにも醒めて、情熱が持てずにいた英太に向上心が芽生え、東雲侑子への愛が彼を成長させていくところが素敵でした。

 友人たちから立て続けに舞い込む恋愛相談も、真剣な想いに満ちていて胸が苦しくなります。
 コントロールできない、誰かを想う好きという気持ちに振り回されて、自分がどうすればいいのか見失いかけてしまうけれど、答えを出さないわけにはいかなくて……。まさに青春を謳歌している若者たちの弾けんばかりの若々しさ、輝くばかりの瑞々しいエネルギーの嵐の本流に、ただただ圧倒されました。

 英太が旅行にこだわっていたのは、東雲侑子との思い出を作っておきたかったのかもしれない。
 暫しの別れは切ないけれど、英太が成長して二人が対等の存在として付き合うにはどうしても必要なことだったんでしょう。側に居ないからと、お互いの愛がなくなるわけではない。むしろ会えない時間が、愛を育む。二人ならそうして今以上に絆を強めてくれると信じている。ピュアな純愛を描いた良い青春物語でした。

posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ファミ通文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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