彼と人喰いの日常 3 (GA文庫) 火海坂猫 春日 歩 ソフトバンククリエイティブ 2012-05-15 by G-Tools |
美しき人喰い・黒衣との契約に従い、ついに四人目の生贄を捧げた十夜。徐々にこれが"日常"だと受け入れつつある自分に絶望する日々。そんな全てを諦めてしまったかのような少年に、それは何気なく、ごく当たり前のように飛び込んでくる。
幸福な日々の終焉
人喰いの妖と契約してしまった少年の非日常的な日常を描く現代伝奇ファンタジー。
ヒロインの中では黒衣が一番可愛いと思うのは私だけなんだろうか。悪女かわいいよ悪女。
契約として黒衣に代償を捧げることに慣れてきてしまった主人公・十夜の前に、記憶を戻した幼馴染・立夏が現れ、以前の日常を取り返したかに思えば、再び非日常に引き返していく姿がやるせなかった。
自分の願いとは裏腹に日常と非日常の狭間で振り回され揺れ動く十夜の懊悩が胸に詰まります。
なにかと自分を人殺しと自虐する十夜の内罰的な性格は、黒衣の主としての強い責任感の現れとも言えるんだけれど、いつまでも卑屈すぎる態度なのもそれはそれで嫌味ですね。
手段こそは間違っているけれど、自分の決めたことを貫いているのだから堂々としていればいい。
甘い言葉を囁いて十夜を慰めた次の瞬間には絶望に突き落とす黒衣のドSっぷりがたまりません。
消したはずの立夏の記憶が戻って、かりそめの日常を過ごしていくうちに、偽りであっても幸せな彼女の現在を確かめた十夜は、もうその彼女の幸せのために突き進むしかなくなっちゃったんだろうな。
葵のやったことは余計なお節介だったにせよ、真白を許した十夜にしては躊躇いがなかった。脅しだけでいいんじゃないかと思うけど、立夏のためにどれだけできるかという十夜なりの覚悟だったのかも。
最後、こうなることは予想できた。一度捨てたものを、また捨てなくてな行けないというのは辛いでしょうね。短い間でも自分が捨てた何気ない日常のありがたみを味わってしまったからこそ余計に……。
それにしても退魔省もっと働け。朱音とか、大きい口を叩く割に今のところ全然正義じゃないぞ。
決着が着いたようで、まだまだこれからが一波乱あるような結末がたっぷりと気を揉ませてくれる。