![]() | 楽聖少女 (電撃文庫) 杉井 光 岸田 メル アスキー・メディアワークス 2012-05-10 by G-Tools |
高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、二百年前の楽都ウィーンへ連れ去られてしまう。そこは、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!? 現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は
時間を止める感動がここにある
二百年前のウィーンへ時間移動した少年の魔術と音楽が入り乱れるめくるめく絢爛ゴシックファンタジー
ボクっ娘ベートーヴェンちゃん( ^ω^)ペロペロ 私もルドヴィカちゃんファンクラブに入る!
悪魔メフィストフェレスによって、文豪ゲーテとして二百年前のウィーンへタイムスリップした男子高校生・ユキが、天才音楽家の少女ルドヴィカと出会い、戦争と政治で揺れる国際情勢のなか、幾多の妨害にも屈せず、ただ音楽と芸術のみを追い求める音楽家たちの意地と矜持に魅せられました。
悪魔によって現代日本から拐われてきて文豪ゲーテと同化してしまったユキが、文豪としての知識と記憶を備えながらも、本質はヘタレで世話焼きでツッコミ体質と、いつもの杉井光の描く主人公だなぁ。
ゲーテが若返ったことを周囲は自然と受け入れてるんだけど、ゲーテを尊敬していたルドヴィカ=ベートーヴェンだけは認めなくて、アパートの隣人としてユキを振り回す奔放な音楽家の姿が可笑しかった。
天才少女のルドヴィカも、自分の音楽が誰にも聞かれずに消えてしまうことへの不安を抱えていて、自分の音楽を追求するあまりに、逆に教会やナポレオン、国家を敵に回してしまうのがやるせなかった。
演奏会の中止を命じられても、そうした政治の圧力を跳ね除け、ユキの呼びかけでルドヴィカの元へ集うウィーンの音楽家たちの生き様が素晴らしかった。ウィーンっ子はみんなロリコンなんだな。
ところで主人公のユキは『さよならピアノソナタ』のナオと真冬の息子だよな、どう考えても。
サリエリ、ハイドン、モーツァルトと当時の有名な音楽家たちもやたらと俗っぽくて人間味が溢れてた。
悪魔の存在によって、史実とはかけ離れたパラレルワールドっぽいファンタジー的世界観も雰囲気にあっててよかったです。まあ時折、現代用語が飛び出すのは違和感に思わなくも無い。続編に期待。