![]() | アンダーランド・ドッグス (電撃文庫) 中田 明 ひと和 アスキーメディアワークス 2012-03-10 by G-Tools |
私、カイです。相棒のファイとわっる~い犯罪者を捕まえる賞金首ハンターをやっとります。今この街はおっきな宗教の新教祖就任問題でゴタゴタ中なんだけど、さらに極悪人てんこ盛りの囚人護送車から凶悪犯が7人も逃げだしちゃって大騒ぎらしい。血が騒ぐぜー
犬がごうなら人もごう
治安の悪化した日本を舞台に悪い人たちの思惑が交差して巻き起こるブラックコメディ群像劇。
登場人物全員、ぶっ飛んで悪いやつばっかで、ちょーイカレてるわー(褒め言葉)
刑務所からの護送中に脱走した7人の指名手配犯を追って、賞金稼ぎと治安当局、そして怪しげな宗教団体が閉鎖された地下街を舞台に群像劇を繰り広げるのですが、逃げ出した脱獄犯よりも、それを追いかける側の方が悪辣すぎて、凶悪犯が哀れな犠牲者に思えてくるのがなんとも言えねぇわ。
治安の悪いスピアシティの地下街の片隅で細々と暮らす女賞金稼ぎのファイとカイのコンビが、相性が噛み合ってないようでいて、それでもお互いを心配し合っている姿が姉妹のようでいて微笑ましい。
逃げた7人の脱獄犯がワケありでヤバイ宗教団体からも狙われていて、かけられた賞金目当てに追いかける彼女らまで厄介事に巻き込まれて窮地に陥っていく展開に幾度となく冷や汗をかかされました。
前作から再登場の女性捜査官リズも、自らの不始末で逃してしまった凶悪犯を追いかけて地下街に潜入するんですが、相変わらずのスタンドプレイで行く先々で余計なトラブルを起こして事態を悪化、混乱させていって……無茶苦茶だよこの女! まったくよくそれで治安局なんか入れたな!
カタギとは言えない悪人たちの思惑が絡み合うノンストップの大騒動は熱気と興奮を味わえる。
命の危険に晒されながら、絶対絶命の危機をくぐり抜けてカイとファイの迎える結末は、最高ではないが最善の結果ではあって、ある種のやりきった達成感とカタルシスに包まれますね。
しかし、この作家さんはずっとこの作風で行くつもりなのかなぁ。確かに作品が個性立っているけれども、電撃文庫では邪道すぎて読者を選ぶよなぁ。いや、私は嫌いじゃないけれど、むしろガガガ文庫向け?