![]() | 二四〇九階の彼女 西村 悠 メディアワークス 2006-10 by G-Tools |
【神の代行機械アントロポシュカによって管理される階層世界。少年・サドリは相棒のカエルとともに海を目指して塔を降りてゆく。かつて交わした「彼女」とのただひとつの約束を果たすために】
なんで両生類なんだよ
塔のかたちをした階層世界を旅する少年サドリと、
カエル型AIのカエルのロードストーリー短編集。
「カエルは実は美少女なんです」という記述が目立つが、
だったら最初から人間形態にしてくれよ!
無表情なわりに毒舌で高慢なAI美少女プリーズ!
階層ごとに世界観が固定されていなくて面白い。
管理者であるアントロポシュカにより様々な特徴があり、
草原と図書館でできている世界や、戦争ばかりしてる世界。
人間がまったくいないゴーストタウンのような世界から、
人がカエルになっているなんてブッ飛んだ世界まである。
とくに「九一四階の積層図書館」が好み。
図書館の外に出ずに本を書き続ける【記述者】の少年と、
彼を連れ出そうとする少女を描いた、これこそラブ!
オリネラに口では冷たく突き放しつつも、自分が外に出てしまったあとの彼女のことを考えるフリオラ。
好きな相手だからこそ寂しい思いをさせたくない。
大切な相手だからこそ辛い思いをさせたくない。
お互いに想っているはずなのに、なかなか通じ合えない二人がもどかしい。外に出た二人のその後が幸せになるといい。
って、これメタなのかよ!
表紙に釣られてみたけれど、正直ちょい微妙。
総じてまとまっているのだけれど、小奇麗で迫力がない。
主人公が比較的凡庸なキャラでアクが弱く勢いに欠ける。
各話ごとのゲストヒロインには切ない共感を抱いたが、
図書館とカエルの世界以外は、どうも結末が報われない・・・。
ストーリーは平均点。あとは気軽に楽しめる要素が欲しい。