 | 眠らない魔王とクロノのセカイ (GA文庫) 明月 千里 閏月戈 ソフトバンククリエイティブ 2012-01-16 by G-Tools |
自分の“ルール”を作り出す、異能力『世界<ワールド>』と、それを操る能力者『世界使い<ルーラー>』が存在する現代。高校生・神木凪夜は“魔王”と名乗る少女・クロノと出会う。クロノの巻き添えで、殺された夜は、彼女とともに街中で起きている『神隠し』の事件を追う。
世界の敵を救う正義
『正義』を捨てた少年と『魔王』の少女の異世界交錯<クロス・ワールズ>学園ファンタジー。
すっごい王道の学園異能バトルで、セカイ系も絡んでますね。安定の中二病ホイホイでした。
吸血鬼の魔王・クロノと出会ったことで、異能力『世界<ワールド>』を操る能力者『世界使い<ルーラー>』の組織間の戦争に巻き込まれた主人公・神木凪夜が、彼女と共に戦いを繰り広げていくうちに、幼い頃に負ったトラウマを乗り越え、失っていた正義の心を取り戻していく姿が毅然としてシビレました。
過去の失敗から異能力を使わないように平穏な暮らしを過ごしていた夜が、吸血鬼の眷属を束ねる魔王であるクロノに気に入られてしまい、一方的に下僕にしようと契約を持ちかけてくる傲岸不遜な彼女の行動に翻弄される、じれったくてもどかしい主従関係が可笑しい。
見せかけのクールな仮面が次第に崩れ始め、本当は熱い夜の胸中が見えてくるのがよかった。
異世界からの侵略者である『魔王』と、対立するこの世界の防衛組織『世界和平協会』、『正義派』の主張はお互いに背負う同胞がある立場故に相容れないものなんだけれど、「どちらが正しいのか暴力で決めようぜ、勝った奴が正義だ」というのは乱暴だが、お互いに納得しているならシンプルでいい。
ただクロノの処遇を巡る裏取引はゲスいな。しかし、このドロドロとした雰囲気がとても好きです。
前作『月見月理解シリーズ』のような邪道ものを期待していただけに、この方向性は想定外だったものの、世界観の作り込みやキャラの魅せ方がしっかりしていて、テンプレでしたがそこそこ満足でした。
夜の能力はどこまで制約と罰を設定できるのかな。使い方の自由度が広すぎて、魔王級でも封殺できる潜在能力を備えているんだけれど、どこの異世界の能力なんだろうか。次回はもっとクロノが可愛くなりますように。
