![]() | ようこそ、フェアリーズ・インへ! (電撃文庫 お) 小河 正岳 得能 正太郎 アスキー・メディアワークス 2012-01-07 by G-Tools |
さえない駆け出し冒険者のラウル。彼が居候している宿屋の女将が病気で倒れてしまう。ツケをためても許してくれていた女将がいなくなり不安だった彼だが、新しくやってきた女将はびっくりするぐらい純粋で美しい少女だった。

駆け出し冒険者と宿屋の美少女の魔王も倒さず世界も救わないほんわか冒険ファンタジー。
主人公がクズい! ヘタレなのも冒険者として素人なのも別にいいんだけれど、弱いし機転も働かないしなんのスキルも持っていないクセして身の程知らずでうぬぼれ屋というキャラが気に食わない。
内実が伴わない見栄っ張りでも少しは意地を張るくらいの気概は見せて欲しいのだけれど、負けるとみるやすぐに逃げる臆病ぶり、役立たずな上に毎度ヘマこいて騒動を起こす姿がイライラしてくる。
お世話になっている宿屋の女将さんが倒れてしまい、危篤状態を告げるために女将さんの孫を探しに地下ダンジョンに潜っていくまでは完全に善意だったからヘッポコ冒険者でも好ましく見ていられたんだけど、帰ってきてからは老いた女将さんに代わって宿屋を切り盛りし始めた美少女・ミリーが自分を偉大な冒険者と誤解しているのをいいことに格好つけて自分を大きく見せることしか考えていないのが腹が立つ。
冒険者は自分を偽っちゃいけねェよ。ファンタジーにおける冒険者がヒーローであるのは、モンスターが徘徊する危険な世界を己の身ひとつで踏破し、支配者におもねず我を張って、好奇心の赴くままに新天地を目指す、その強かで逞しく自由な生き様にロマンと美学を感じるんだろ。
それなのにこんな嘘と虚飾にまみれた思い上がったガキにいったい誰が憧れるんだよ!
仮に嘘でもそれを真実にする努力を一欠片でも見せてくれればなぁ。クズは最後までクズだった。
そもそもどうしてそんな臆病で冒険者やってるのかが謎だよ。宿屋の従業員の方が向いてるじゃん。
ゆるい感じの日常系ファンタジーを目指したコンセプトは面白いと思うんですが、「ゆるい」が「ゆとり」になってしまってるのが残念なんですよね。ミリー、エル、ルネの三人娘はよかったと思う。