![]() | 戦鬼 ―イクサオニ― 川口 士 富士見書房 2006-09-20 by G-Tools |
【鬼と人間が共存していた村。そこを突如人間たちが襲う。そして鬼の少年・温羅は捕らえられ、彼の父の首は都に晒される。復讐に心を燃やす少年・温羅と人間の少女の旅の物語。】
不快!不毛!不細工!
父の仇を取るべく人間の少女と旅をする鬼の少年・温羅。
鬼を超えた邪悪な力を持つ謎の敵に挑む伝奇ファンタジー。
昔話『桃太郎』と日本神話を生のままクチャグチャにしたカンジ。
久しぶりに心の底から「退屈」という気分に浸れました。
だって全然、ストーリーが面白くないんだもの。
文章力とか構成力以前に話がつまらないもの。
ラブコメなら萌えがある。ミステリなら謎と不思議。
エンタ系ならノリのいい興奮がページをめくらせる。
読者を読ませる力? そんなものがありましたかコレに?
まず、主人公がダサくてカッコ悪い。
『逆襲の魔王』のときにも散々言った覚えがあるけれど、
復讐心にとらわれた根暗なキャラなんかに共感できない。
人間の少女・梓と関って変わっていったから、だから何?
何を伝えたいのか中身が無い。
虐げられし者の苦痛? 理不尽な社会への憤懣?
物語を読んで浮かぶイメージは、とことんネガティブ。
作者が自分で作った世界に酔ってるのがわかります。
ナルシスティックでキモいです。性根が歪んでます。
文章と完成度こそ新人では身綺麗にまとまっている。
だが、この程度の文章を書ける作家はゴマンといる。
完成度なんて時間かけてプロットを練れば高められる。
必要なのは読者の価値観をブチ壊し、ブッ飛ばす個性。
ライトノベル作家なら文章や完成度なんて一番最後でいい。
それよりなにより、読者を楽しませてやるという作家の意思。
どんなに技術が高く、審査委員に注目されようとも、
物語に人を惹きつける魅力なくしては読者に評価されない。
富士見ファンタジア文庫の新人の弱点はそこです。
読者の視点で物語を考えるという認識が欠けている。
まあこの作者は『富士見ファンタジアの呪縛』が発動したし、
長くとも、寿命はあと1年だ。