![]() | SHI‐NO―天使と悪魔 上月 雨音 富士見書房 2006-09 by G-Tools |
【いつもは僕の家で夕食を食べるシノちゃんが、ここのところ寄りつかない。キララ先輩には「倦怠期ちゃうか?」とからかわれるけれど、また危ない事件に巻き込まれてないかと心配なんだ。】
「彼女は生粋の殺人鬼です」
なにその零崎
ダメな人々が崇拝してやまない暗黒幼女シノシノ。
ダークというよりホロウ。深く穿つ奈落のように漆黒なる魂。
そんな彼女にどこまでも平凡な人間らしさを訴える"僕"。
彼のために殺人鬼としての本来の自己を否定し続ける彼女が少しずつ変化していく過程が微笑ましくも、どこか危うげ。
真白と大垣の関係は、志乃ちゃんと"僕"のデッドコピー。
兄が大切な妹のために道を踏み外してしまったルート。
大垣が間違ってしまったのは、まず社会に流布している『正義の味方』そのものが誤った認識の存在だからでしょうね。
正義の二文字を背負える個人はいない。
法律が正しいのは個人で判断できることではない。
死刑囚とて人を殺す罪が消えてなくなるワケではない。
正義も悪も、すべては社会という圧倒的な量の薄め液によって誰の身の内にも分散して混在しているのです。
正義でも悪でもなく、どちらにも染まっている、それが人間。
他人の罪ばかり蒐集する志乃ちゃんが抑えられているのも、
"僕"があまりに当たり前の人間すぎる存在だからでしょう。
正義も悪も受けとめる、けれど人間として間違わない。
志乃ちゃんの「怪物」に匹敵する「人間」の強さを感じます。
幼女の語る哲学談義に魅力を見出せる人には美味しいが、
それ以外には、なに言ってるのかサッパリわからないだろね。
純愛系ミステリを名乗りつつ、作者がミステリを投げたよッ!
志乃ちゃんサイドの問題は片付いてないので、このまま続くぽいですが、新たに設定された刃物スキルが気がかりです。
100円ペティナイフで、襲いかかるスト−カーたちを斬殺しまくる。なんて超展開にならないだろうな・・・・・・。
なにその零崎、もしくは、なにその斬島。
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