ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫) 三上 延 アスキー・メディアワークス 2011-10-25 by G-Tools |
鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある―それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。
本に託された親子の想い
美しき女店主と無骨な青年店員がおりなすビブリオミステリ。
古書のことなら万能でも、それ以外では世間知らずで不器用な栞子さんが可愛いすぎる。
栞子とも和解し、再びビブリア古書堂の店員として働きはじめた五浦の元へ舞い込む古書の謎とそれにまつわる人々の人間関係、そこから解き明かされる予想外な真実が読者の興味をかきたてる。
徐々に栞子さんの過去も明らかになりつつ、五浦との恋愛模様も見逃せない。
顔なじみの客・小菅奈緒の妹が書いたという「読書感想文」を発端とする第一話『時計じかけのオレンジ』での騒動では、青少年の健全育成に関する例の規制を頭に思い浮かべてしまったけれど、確かに年齢に相応しくない本ばかり興味を持って読んでいる子供は、親としてはちょっと心配ですよね。
でも、そうした心配っていうのも、我が子を思いやっての愛情からこそなんじゃないかな。
第二話の『名言随筆 サラリーマン』では、まさに己の本音が口に出せずにすれ違ってしまう親子を描いているけれども、同じ事は男女の関係や他のどんな関係にも言えますね。
本を通して親から子へと、受け継がれる思いを第三話『UTOPIA 最後の世界大戦』では取り上げ、一見ほのぼのとした昔話のようで、栞子さんと母親との確執が垣間見えてくるのには辛かった。
栞子さんの母親は相当に厄介な人だったみたいだけど、母親のしたことが悪いことだと自覚しているなら、同じようにはならないんじゃないかなぁ。もし万が一、間違いを犯しそうになっても、側に自分を止めてくれる人がいればいい。五浦には栞子さんにとってのそういう存在になって欲しいな。
なんだかんだ栞子さんも満更でもないように見えるんだけれど、今後の行方はどうなるのか。