![]() | バベル (電撃文庫) 中田 明 ひと和 アスキー・メディアワークス 2011-09-10 by G-Tools |
国家解体後、連邦制が導入された日本。犯罪者と異国人で溢れる関東州スピアシティでは、クリスマスの喧騒の裏で国を揺るがす2つの事件が起こっていた…。1つ。国宝「肺魚」の盗難。2つ。マフィアの娘「スーシャン」の誘拐。ともに事件解決へのタイムリミットは、聖なる夜が明けるまでのわずか24時間。
善にも悪にも貴賎なし
治安の悪化した日本を舞台に悪い人たちの長くて騒々しい1日を描いたブラックコメディ群像劇。
善人側も悪人側も、どっちもあまりお友達にはなりたくないロクデナシばかりだ。民度低いな日本。
悪徳が蔓延する都市・スピアシティで起きた二つの重大事件を巡って、マフィアと治安当局がめまぐるしく動きまわり、それぞれの思惑が絡みあって収束していくドラマティックな展開に圧倒されました。
登場人物は多いですが、どいつもこいつも一癖や二癖もある食えないキャラクターで印象的でした。
ユリは大財閥のお嬢様にしては面白半分にマフィアの騒動に首を突っ込みすぎていて、危険に踏み込んでいるという自覚が少々欠けているけれど、シュンペータとの探偵ぶりはなかなかいいコンビでした。
雁首揃えて誘拐犯に踊らされっぱなしなマフィアの幹部たちを尻目に、事件の真相へと近づいていく二人にワクワクを感じなかったとはいえません。世話がかかるけれど脳天気なお嬢様が憎めない。
一方、美術館で起きた肺魚盗難事件の捜査を任せられた女性捜査官リズの問題児っぷりと、民間の探偵でありながら有能なロギーが好対照。ロギーが一番まともで人間として魅力的だったかな。
場当たりの強引な聞き込みでネタを掴むリズに対して、地道な観察で推理を組み立てていくロギーと、それぞれスタイルはバラバラなのに、最後にはうまいこと解決に向かっていくのが不思議でならない。
ストーリーはよくできているけれど。どこか後味の悪さというか、苦々しさが読後に残るなぁ。
登場人物みんな悪党ばかりというのは別に構わないんだけれど、悪なりに悪のプライドがあったり、ダークヒーロー的なカリスマ性があるとか、もっと好感を持てるようなキャラメイクが欲しかったですね。
ときに誘拐事件の方って、ユリたちがいなくても事件解決したんじゃ・・・それは言ってはいけませんか