![]() | キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫) 赤月 カケヤ 晩杯あきら 小学館 2011-05-18 by G-Tools |
海里克也は保健室で目を覚ました。なぜここにいるのか?保健医の鏡司によると、階段で転んで気を失っていたらしい。……覚えていない。十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。また記憶が消えてしまったのだろうか。
門の向こう側の世界
幼い頃に記憶を無くした少年が、不幸の手紙から己の過去と向きあうサイコサスペンス。
ここに精神病棟を建てよう、とでもいいたげな、これぞガガガ文庫とでもいうべき、病みっぷり。
過去に殺人事件の重要参考人とされながら当時の記憶を無くしている主人公・克也が、不可思議な不幸の手紙をきっかけに、過去の自分と向きあい、徐々に明かされていく真実に背筋に寒気が走った。
作中の登場人物の意識や認識がズレる感覚がなんとも言えない気持ち悪さでもにょる。
どこからともなく克也の手元に届く奇妙な不幸の手紙を気にかけつつ、表面通りは普通の学生として仲の良い友人たちと何気ない日常をおくるのだけれども、やがて失った記憶のフラッシュバックが頻繁に起こるようになり、さらに克也の周囲で不審者の影がちらついてきてと、ストーリーが進むにつれて次第に忍び寄る平穏の崩壊の気配に不安感を掻き立てられる。
育ての養父から、自身が未解決の殺人事件の容疑者とされていたことを聞き出し、今の自分は仮りそめの人格で、本当の自分は殺人鬼なのではないかと悩み悶える姿はなんとも痛ましい。
ですが、自分への疑いをもったまま逃避するのではなく、現実の過去と向き合い、記憶を取り戻す決意を定めたのはよかったです。明かされた真実は……凄惨の一言。
まあミステリの要素は叙述トリックで示唆されていることを含めて、概ね予想通りで驚きはしなかったのですが、主人公もヒロインもいい狂いっぷりだった。ただ読んで欝になるので続きはごめんなさいしたくなった。
しかし、昨日の『屋上』といい、よくガガガはこんな作品を拾い上げたな、と思ったらゲスト審査員に麻枝准がいた。ある意味納得である。他のレーベルと致命的なズレがあるような気はしないでもない。


