アンチリテラルの数秘術師(アルケニスト) (電撃文庫) 兎月 山羊 笹森 トモエ アスキーメディアワークス 2011-02-10 by G-Tools |
ビルから落ちていく儚い少女。彼女の背中に、一瞬、羽が見えた気がした―それが、高校生の俺、冴上誠一と“数秘術師”羽鷺雪名との出会い。ある日突然、俺の妹・愛架が誘拐されてしまう。血眼になって探す俺は、虚空に浮かぶ、ノイズがかった無数の数字を見た。混乱する俺に雪名は告げた──
未来は可能性によって創られる
万物万象に宿る数値を書き換えることで奇跡を起こす数秘術を巡る“数”の異能バトルアクション。
理数系は俺得なのかな。そこまで物理数学してないけど、専門用語がご馳走様でした。
万物を構成する数が見えるようになった主人公・誠一が、数を操る数秘術師であるヒロイン・雪名の手を借りて、世間を騒がす怪人・赤帽子に立ち向かい、0%の確率を打ち倒す姿が熱かった。
諦めなければ、どんな可能性も決してゼロではない。ロジックに縛られない人の強さに魅せられました。
最初は淡白で冷めた主人公と頭はいいけど何を考えてるかわからないヒロインという印象だった二人ですが、ストーリーが進むにつれて、誠一はお人好しで熱血してくるし、雪名もごく普通の女の子らしい可愛い一面を覗かせてくるしで、思わぬギャップにやられた!という感じです。
戦うヒロインとサポートする主人公という役割はありふれていましたが、キャラの見せ方は上手かった。
人の願いを叶える怪人・赤帽子に妹が連れ去られ、誠一も数秘術の世界へと足を踏み入れることになるわけですが、この数秘術という異能は数学といいながらどう見てもオカルトでなんとも不気味ですね。
赤帽子も誠一も他人のためにという動機は一緒ですが、人の心は数式や確率で計れるか、計れないか、そこが両者の運命の分かれ目だったんでしょうか。最後まで諦めない誠一に惚れました。
スケールのぶっ飛んだ展開を次々に繰り広げているのに文章が重厚でそれなりにまともに読めてしまった。中二病を恥ずかしげもなくやってしまえて、堂々と開き直れるこの作風は強いな。
誠一にとっては仇の娘、雪名にとっては恩人の息子というお互いの微妙な関係が、この後どう変わっていくのかも興味が尽きないところです。絶望の中でも可能性を信じて未来を作っていけたらいいな。