ダフロン

2010年09月26日

紅のトリニティ/椎名蓮月

4829135662紅のトリニティ (富士見ファンタジア文庫)
椎名 蓮月 水月 悠
富士見書房 2010-09-18

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気弱な少年・若竹有明は幼馴染みの少女・花連と共に、「螺旋師」を育成する学園に入学した。才色兼備だが、なぜか有明に厳しい先輩には非難され、志高い級友達からは敬遠され、有明は孤立する。だが、ある日、有明は出会ってしまった。己の運命―すべてを共にする相棒である少女と。

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 世界を脅かす「蝕」を駆逐すると戦う少年少女の学園バトルファンタジー。

 怪物と戦う異能者たちの学園モノという、ありがちな設定でいまさら目新しいものは目当たらない。
 「螺旋師」としての高い資質がありながら、自暴自棄になっている主人公・有明が、パートナーと出会って人間的に再生していくんだけれど、肝心の心理描写がどうにも薄っぺらく感じてしまったな。
 まあ他のヒロインが可愛いから許せますが、主人公が非常にウザ系なのが大幅なマイナス要素。

 「螺旋師」を目指すわけでもないのに学園に入学して、空気を読まない発言で周囲とも孤立して、何事にも投げやりな有明が行き当たりばったりの考え無しに思えてしまって次第に腹が立ってきますね。
 困ったときはすぐに幼馴染の花蓮に泣きつくのも情け無さすぎる。甘ったれるのもいい加減にしろと言いたくなってしまう。これでは確かに他人から「馬鹿」、「幼稚」と揶揄されるのも仕方がない。

 自分のせいで父親を死なせてしまった罪悪感から自分に対して否定的になるのもわからなくはないのですが、彼の場合はそれがただの甘えに見えてしまうのが残念なんですよね。
 他の学生たちだって多かれ少なかれ悲惨な過去を経験して、それでも誰かのために自分の力を役立てようと決意して学園に来ているのに、彼らと比べてしまうと余計に有明がガキっぽくて萎えました。

 終盤までずっとうじうじうだうだ言ってたのに、たかが最後の十数ページくらいであっさりとそれまでの鬱屈をひるがえしてしまうところもなんだか拍子抜けですよ。それこそもっとページ数を割くべきだろう。
 この作品はストーリーの構成が悪いんだと思うなぁ。話の展開が回りくどくてテンポが遅いんですよ。
 主人公の復活や成長こそを重点的に描くべきなのに、現状の比率だと主人公がいかにダメな奴かという部分ばかりが強調されてしまっている。

 エピローグも尻切れトンボ気味だし、続編はもう少しプロットの段階からページの割当てを調整して書けば、作品の印象も変わってくるだろうし、キャラも格段に良くなるんじゃないかなぁ。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日一巻だけ読みきってみましたけど
全く同じことを思いました。

中盤での螺旋師の説明がグダグダ過ぎる
蝕の脅威もちっとも伝わらなかったのが残念。

主人公は嫌いですが、先輩達の意図等の続きが
気になるんで、もう一巻だけ付き合ってみよう
かなと思ってます。

(返信は不要です)
Posted by haru at 2011年08月12日 20:54
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