僕たちは監視されている (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 さ 1-1) 里田 和登 国道12号 宝島社 2010-09-10 by G-Tools |
「IPI症候群<クローラ>」と呼ばれる原因不明の病気が蔓延する社会。「IPI配信者<コンテンツ>」のひとり小日向祭は、自活しながら日々騒がしい高校生活を送っていた。そこに、同じく<コンテンツ>であるテラノ・ユイガが転校してきて……。
少女の秘密は蜜の味
「IPI症候群」と呼ばれる患者の為に自らの秘密を切り売りする少女たちの愛と葛藤の物語。
このライトノベルはすごい真っ直ぐだなぁ。ストレートに心を揺さ振ってきて眼を離せない。
自分の生活をWEBで配信し、常に誰かに監視されているために清廉潔白であることを強いられる「IPI配信者<コンテンツ>」の生き方には気高いものを感じるが、そうして秘密を隠して自分らしく生きられないことに矛盾を抱え、葛藤し苦悩する少女たちの姿がとても切なく胸を締めつける。
祭は自分たちを哀れではないと言うが、年端もいかない少女たちが誰にも守ってもらえず、自分のプライベートを売らなければ生きていけないというのは、それだけでとても不幸なことなんじゃないかな。
ましてやそれによって自分自身が傷つき、誰かを傷つけてしまうとしたら、それは間違っている。
潔癖で真っ直ぐな祭にしてみれば、秘密を抱え、他人を騙さなくてはいけない生活がどれほど辛いだろうか。
日常を暴露してしまう祭やユイガたち「IPI配信者<コンテンツ>」に過剰に怯え壁を作るクラスメイトやWEB上で誹謗中傷を書き込む輩の身勝手な振る舞いには憤懣やる方ない思いにかられる。
ユイガの場合にしても、周囲の理解を得るために苦難を強いられるべきのは、むしろ彼女の秘密を迫害の対象と見る社会や大人の方ですよ。他人の都合で振り回され、彼女たちの純真な心が傷ついて、悲鳴を上げる光景は、本当に残酷で見ていられなかった。
祭が抱いたユイガへの想いは、おそらく友情とは違う特別な何かだったんじゃないかなぁ。ユイガとの絆を取り戻すために祭と一葉のした方法は、「ここでかよ!!」と度肝を抜かれた。祭さんマジパネェ!
途中から「IPI症候群<クローラ>」の治療のためという建前はどうでもよくなって、ただのネットアイドルとどう違うのか分からなくなってきちゃったのは設定倒れでしたかね。
祭と一葉の関係がとても気になりますが、その『秘密』はまた先のお楽しみでしょうか。続編出てー!おねがいです、これは続編出しましょう!