ダフロン

2010年09月05日

ランジーン×コード/大泉貴

4796678824ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お)
大泉 貴 しばの番茶
宝島社 2010-09-10

by G-Tools

コトモノ――遺言詞によって脳が変質し、通常の人間とは異なる形で世界を認識するようになった者たち。全国各地でコトモノたちが立て続けに襲われるという事件が発生。武藤吾朗(ロゴ)は、事件の中で犯人の正体を知る。その正体とは、6年前に別れたはずの幼なじみ・真木成美だった。

 世界は言葉で満ちている

 遺言詞によって繁殖し人間の脳に巣食う特殊な意識生命体「コトモノ」をめぐる異能サスペンス!

 このライトノベルは確かにすごかった! レーベル名に偽りなし! 名前が微妙とか言ってすまんかった。
 「コトモノ」によって異能を得た不思議で奇妙な登場人物たちが恐ろしくも、社会に適応して生きていくには難しく、金儲けや研究のために利用され、もがき苦しむ不器用な彼らの姿が無性にいとおしい。
 世界の有り様までも改変してしまう「コトモノ」を巡る陰謀に立ち向かう迫真の物語に圧倒されました。

 鳥と会話できるコトモノ、透明人間になれるコトモノ、聴覚に優れるコトモノ、数学に強いコトモノなど、様々な異能を分け与えるコトモノたちが、まるで本物の生き物の様に独自の文化と言語、生態系を形成して一般社会の中でその存在と異能を隠すことなく生活しているのが興味深かった。
 新しいコトモノが登場する度に、コトモノをコレクションしていっているような妙な達成感がありますね。

 コトモノを金儲けに利用する企業、はぐれ者のコトモノたちの相互扶助会、そしてコトモノを裏で操る謎の組織と三者三様の思惑が入り乱れる中、最後まで諦めず己の遺志を貫き通し大切な仲間を自分の元へと引き戻す主人公が素晴らしかった。
 いわば吾郎と成美と由沙美は「コトモノ」で結ばれた家族なんでしょうね。誰かに利用されることなく三人が寄り添って暮らせる日常がいつか訪れるといいなぁ。

 次々と新展開を見せるストーリーの構成力といい、奇抜な発想によって作りこまれた世界観といい、完成度が高い上に、作中のキャラクターの叫びが読者の心に訴えかけてくるような感性度も高いです。
 ただシリアスに染まりきっているので、全体の1割ほど笑いや萌えがあっても悪くはないと思いますし、個人的好みとしては恋愛要素が欲しいところですね。物語に"緩み"がなくて読んでて疲れました……。

 大賞にふさわしい傑作でしたが、次回作はもうちょい力を抜くと丁度よくなるんじゃないかなぁ。


 ちなみに今回は宝島社から献本頂いて発売日前だというのに新刊五冊を受け取っていたのですが、ラノベサイト界隈では、あの人とか、この人がすでに感想を上げていたので、こちらも踏み切りました。私は無実。
 宝島社のこのライトノベルがすごい!文庫編集部の方々、ありがとうございました。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック