ダフロン

2010年08月23日

シー・マスト・ダイ/石川あまね

4094512241シー・マスト・ダイ (ガガガ文庫)
石川 あまね 八重樫 南
小学館 2010-08-18

by G-Tools

ぼく達は呆然としていた。理科の実験中、教室の窓ガラスを破って重装備の兵士が飛び込んできたのだ。男子生徒の一人が兵士の言葉に逆らって脱出を図る。超能力者の彼なら逃げのびて助けを呼んでくれるかも!しかし、ぼくの期待もむなしく、銃が火を噴き、彼は動かなくなった―

 すべてはただ一人の幸せのために

 超能力が一般化した近未来日本、力ゆえに命を狙われる中学生の戦いを描くサイキックサスペンス

 超能力の使い方といい、ラストがすごい。ありそうでなかったタイプの学園SFです。
 中学校の教室がテロリストに占拠され、人質になったクラスメイトのヒロインを助けるために主人公が立ち上がるという、いったいどこの中学生の妄想かという導入部でしたが、ストーリーが進むにつれて徐々に明かされてくる陰謀の真実に引きこまれ、驚愕の結末に息をのみました。

 テロリストに逆らったクラスメイトが次々に撃ち殺されていく描写が、もし映画になったら間違いなくR-15指定になりそうなほど無残で、平凡な教室が殺戮の現場へと変わっていく情景に目をそむけたくなる。
 なまじテロリストよりも同級生の北島の方が、人の皮をかぶった悪魔のような人格破綻者で恐ろしい。
 校舎の中がテロリストに制圧されてるときに女子を密室に連れ込んでレイプって思考がやばい。

 疑わしきはすべて罰するという自衛隊の作戦は、いくらなんでも強引でしたね。騒ぎ立てられないように事故に見せかけるとか、もっと事件性の少ないスマートなやり方もあったろうに。
 そのリアリティの無さ、不自然さに「超越者の意思」みたいなものを感じずにはいられませんでした。
 国民の最大公約数の幸せの為に最小の犠牲を斬り捨てる自衛隊の決断が、実は最小の最大数の幸せのために国民を犠牲にする策略に利用されていたというところはいい皮肉が効いていました。

 人は誰でも幸せになるために、誰かを犠牲にしている。それをより顕著に具体化したような作品。
 無意識とはいえ、自分の幸せの為に事件を引き起こしている誠にまったくの罪がないとは決して言えないが、根っこにあるものがとても純粋な恋心なのだから、どうしてか許せてしまうなぁ。
 しかし、こういうものをポロっと出してしまうあたり、本当にガガガ文庫はブラック専門レーベルになってきたなぁ。小学館さん、この方向性のままでいいんですか?
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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