魔王城五限目 (ファミ通文庫) 田口 仙年堂 鉄雄 エンターブレイン 2010-07-30 by G-Tools |
魔王の遺児、歩く災厄。魔人。そう呼ばれる子供たちを守るため、「魔王」となることを決意したエイゴ。国王に直談判するため王都に向かって進軍を開始するが、その行く手には、義勇軍と正規軍の大部隊が待ちかまえていた。過去の魔王の想い、英雄の願いと罪。すべてを知った魔王エイゴが選ぶ道とは!?
魔王が導く、英雄の可能性
強大な魔力を持つ魔人の子供たちと教師役の軍人青年の交流を描く教育ファンタジー。
子供の可能性を信じて、大人が命をかけて守り育む、教育ってこういうことなんですよ!
魔王軍となったエイゴと子供たちが大切な場所を取り戻すために立ち上がり、それぞれが自分のなすべき運命を見定めて、輝かしい未来を勝ち取っていく光景に涙がこみあげてきました……。
世界を敵にまわしても、たったひとつのことを成し遂げる。それこそが人生の意義なんだろうなぁ。
義勇軍の先頭にいた少佐にエイゴのかけた言葉は、自嘲でしょうね。魔王軍を作ってしまった責任をすべて背負う覚悟を決めたとはいえ、残された子供たちのことを考えたのでしょう……。
そうして子供たちのためにすべてを捨てて国王の元へと向かうエイゴ。大軍から弟や妹たちを逃がすために囮となるジャン。戦争の巻き添えになった一般市民を助けに走るアプリール。
それぞれを思い合い、必死に応えようとする大人と子供たちの勇気と絆が素晴らしかった。
ただハイナートはあのような自滅の道ではなく、然るべき罰を与えられるべきだったなぁ。
英雄の正体は灯台もと暗しでしたが、魔王の秘密や魔人の出生の謎が綺麗に繋がった真相には思わず納得。国家の安定の為には、真実を隠さなければならなかったとはいえ、そのために魔人の子供たちが偏見と差別の犠牲者になっていたのを見過ごしてきた政府の落ち度を責めずにはいられない。
最初の魔王戦争を教訓として学んでいれば、今回の事件は防げたんじゃないかと思います。
エピローグで成長した子供たちが、社会の中で立派に活躍している姿を聞くとまた感無量。
みんなハッピーピーエンドを迎えられて本当によかった。メイはやっぱりエイゴ先生と××したんでしょうね。魔人が虐げられない世の中を創るために彼らはこれからも頑張っていくんだろう。
最後のエイゴのセリフが最高に決まってて格好良かった。素敵な物語をありがとうございました。